第3章 ③
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「翔太ー、帰ろーぜ」
帰りのホームルームが終わり多くの生徒たちが教室から出て行く中、自分の席で鞄の中に筆箱やノートを入れていると、先に終わった亮と直哉が教室に入ってきた。
「そういえば、もう腹痛いの大丈夫?なんともない?」
「ああ。もう平気」
心配そうに話しかけてきた亮にそう答えると亮は「そっか」と安心したように言った。
「陽貴も大丈夫かな?頭痛で午前で早退したけど」
「返信ないけどLINEのメッセは既読になってるし、まあ大丈夫なんじゃね?」
「だな」
亮と直哉がそう会話しているのを俺はボーっとしながら見ていた。…実際の所俺は陽貴が居ないことにほっとしていた。朝のあの出来事があってから陽貴と顔を合わせるのが気まずかったのだ。
じゃ、帰ろうぜと2人に促され俺は鞄を肩に掛けまだ騒がしい教室を後にした。
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「そういえば中間考査までもう2週間切ってるけど、直哉と翔太は勉強してる?」
住宅街の道を3人で歩く中亮がそんな事を聞いてきた。やべ、してねえ…。
(宮本先生に例の話がとか以前に、まずは中間テスト頑張らなきゃいけねーじゃん!)
「俺は塾ついでに勉強してるなー」
「あー、そういえば直哉塾行ってるもんな。俺は少ししかしてない。…翔太は?」
「してない」
「そうだと思った。でも翔太もバイトしてるし大変だねー、勉強する時間とかあんの?」
「それは大丈夫。テスト前はシフト入れないようにしてるからな…。今日はバイトあるけど明日からは一旦なし」
「そっかー…あ、」
亮が思いついたように俺と直哉に向かって口を開いた。
「じゃあ明日土曜学校休みだし、一緒に俺の家で勉強しねえ?」
「お、そうだな。俺も明日塾休みだし、翔太も明日からバイトはないみたいだしな」
「俺は大丈夫だよ」
俺と直哉が亮に言うと亮はじゃあ決まりだな、と嬉しそうに話した。亮の家で勉強ってなんか久々だなー。
「あ、陽貴にも一回連絡しておこうか」
「そうだな」
亮が陽貴にメッセージを打ち送信するのを眺めつつ、明日陽貴に会うのが若干複雑だなと思うがまあ気にしてでも仕方がないと考えた。
「じゃあまた明日なー!バイト頑張って」
手を振ってくる亮と直哉に手を軽く振り返し、2人と別れ俺は1人歩く。大通り沿いの道へと出て多くの人が行き交う道をゆっくり歩き進めた。
(てか陽貴大丈夫かな?俺からも一回LINEしとこか)
ポケットからスマホを取り出してLINE画面を開き文字を打ち始めようとした。
「あれ、なんか面白いもん付けてるねー」
「えっ」
すぐ自分の後ろから若い男の声がし、思わず立ち止まってしまう。そしてその直後にバシャッと何か液体が自分の制服にかかった感じと、その男の「うわっ」と焦った声がして俺は意味が分からず後ろを振り向いた。
「……」
「あらら…、ごめんね大丈夫?」
後ろに立っていた人物は真っ赤な短髪の髪をした長身の若い1人の男で、右手にジュースの入った缶を持ち申し訳なそうにしていた。男の服には缶に入ったジュースらしき物がかかっていて、男に言われ自分も服や鞄を見ると案の定自分の鞄にもジュースがかかってしまっていた。
「君の背中にもちょっとジュースかかっちゃってるわ」
どうやら自分が立ち止まったため赤髪の男も俺にぶつかってしまい、その衝撃で男が持っていた飲みかけのジュースが溢れかかってしまったらしい。
誰も知らない話 2 あずき @AZU-mitu
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