第3章 ②



 

「…おー、おはよう」



陽貴の挨拶に少し間を明けにっこりと宮本先生が俺達2人に挨拶を返した。そのあとに3人の間に沈黙が訪れ俺は居た堪れなくなった。と、宮本先生が口を開いた。



「じゃあ俺は先に行くから」

 


そう言い宮本先生がその場から立ち去ろうとした時、陽貴が口を開いた。



「あれ、そういえば翔太くん挨拶以外に宮本先生に話しかけてたけど、なんか用事でもあったんじゃないの?」



話さなくていいの?と陽貴が首を傾げながら聞いてくるが、こんな状況じゃ聞けるわけない。

 結局その後宮本先生は「なんもないなら行くぞ」と言いその場から去って行った。



 

 「宮本先生行っちゃったけど大丈夫?」


「…ああ。もういいよ」



 陽貴に言葉を返し俺達は歩くのを再開する。


 

(…間が悪いなあ)



バイトやらテストやらで忙しくて、中々宮本先生に電話することも学校でも話をすることもできなくて、それが今日運良く先生に会うことが出来て、やっといろいろ話を聞くことが出来ると思ったのに。


 なのに、なんで陽貴が出てくんの?




「…なあ、翔太くん」



陽貴に対しモヤモヤしながらロッカーで靴を履き替えていると、先に上靴へと履き終わった陽貴が話しかけてきた。



「ん、なに」


「さっき宮本先生に話そうとしてたのって、もしかして俺のことだったりとか…?」


「え?あー、まあそんな感じ」



違うのだが本当の事も言える筈がないので、陽貴に話を合わせる事にする。



「そっか…」



陽貴は眉をさげ目線を下に下げる。そのまま言葉を続けた。



「なんか、ごめんな?」


「え、」


「いろいろ人任せにしちまってさ。もういいからさ、翔太くんに悪いし」


「……」


「それにさ、やっぱり自分で仲良くならないと意味ないと思うんだよなー」


「…そっか」



 俺頑張るから応援してね、と困ったように陽貴が笑うのを見て何ともいえない気持ちになった。ーー俺は一体何を考えてたんだ?なんで陽貴が出てくるって…こんなのただの八つ当たりだ。…陽貴は何も悪くないじゃないか。



「ごめん陽貴、俺少し腹痛いからトイレ行ってから行くし先行っててくれる?」


「あー、わかったけど大丈夫?何だったら鞄だけ持って行って翔太くんの席に置いてくよ」


「ありがと」



 陽貴に対し八つ当たりしている自分が恥ずかしくなって、俺は陽貴に鞄を預け逃げるように足早にトイレへと向かった。

 

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