第3章 ①




 スマホのアラームが鳴り、寝ながらそれを止めベッドから上半身を起こした。



 「……」



今日も夢に出てこなかったな、と俺は思った。そのままひとつ欠伸をし目を擦る。



(でも、なんでここ最近出てこなくなったんだろう…。宮本先生と例の話をしたからか?)



『雪坂達也だ』



 宮本先生が口にしたその人物の名前を俺は思い浮かべる。ーーもしかしたら夢に出てきていた人物はその雪坂達也という人物なのかもしれない。

 じゃあ俺は、その人物とどんな関係だったのだろう。


 今はもう朧気になっているその人物をいろいろ知りたくなってしまった自分に苦笑しつつ、俺は顔を洗うためベッドから出て部屋を後にした。




 ************



 いつもよりも早く家を出て学校へと向かう。校門を抜けて歩いていると見知った人物の後ろ姿を見つけ声を掛けた。



 「宮本先生ー」



 俺の声に気付いた先生がこちらにゆっくり振り向く。



 「おはようございます」



ーー宮本先生にいろいろ聞きたいことがあった。雪坂達也という人物についてや、その人物と俺の関係。まあ聞いたところで何かあるわけでもないが、何か大切な事を忘れてしまっているような気がして。

 あれから中々聞ける機会がなく、やっと今日聞ける絶好のチャンスであり俺は期待に胸を膨らませながら口を開いた。



 「あの、」



 俺が口を開き言葉を発してすぐに宮本先生の眉が顰められ、俺はあれ?と思う。一体どうしたんだ?

 疑問に思っていると誰かに肩に手を置かれた。えっ、と思い見るとそこには陽貴が居た。



 「は、陽貴…」


「おはよー、今日早いね翔太くん。そして、…宮本先生もおはようございます」



俺ににこっと微笑んだ陽貴は今度は宮本先生の方を向いて笑顔で挨拶をした。




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る