第2章 16
(存在しない転校生?)
宮本先生にスマホ越しにそんな事を言われ混乱する。…訳分かんねえんだけど。
「…どゆこと?」
「どういう事も何も、そのままの意味だけどな」
「えー……」
困惑気味に俺はそんな声を出した。そのまた黙り込んでいると宮本の苦笑する声が聞こえてくる。
「驚いたか?」
「いや、なんというか今している話が現実味がなさすぎて」
「だろうな。ま、話半分に考えてたらいいぞ」
「…そんなてきとーな。てかじゃあその…転校生ってのなんなわけ、何者ですか?」
俺の問いに宮本先生はひと息つき、言葉を続けた。
「分からない。だがその転校生は人間ではない事は確かだ」
「ええっ?!じゃあ転校生は宇宙人?それとも妖怪!?」
ますます混乱し宮本先生にいろいろ聞くと「漫画の読みすぎだろ」と呆れたように言われてしまう。…うるせー、読みすぎで悪かったな。
「てか、ひとつ気になる事があるんですけど」
「なんだ」
「その転校生って…一体なんの為にこの学校に来ていたんですか?」
「…不明だ。そいつは時期はずれな5月に転校してきて学校生活を送り、そして誰にも知られないまま去っていった。目的も一切判らない」
「…なにも?」
「そうだ」
「ふーん…」
ますますよく分からないその転校生という人物に首を傾げる。うーんと頭を捻っていると宮本先生が話を続けてきた。
「話は戻るが速水は、ーー少なくともあいつは転校生について何か探っているように俺は見えた。だから俺は極力関わりたくないと思っている。それが理由だ」
「…なんかそんな話聞くとこれから先陽貴と関わりにくくなんだけど」
「まー、気にしなくていいんじゃないか?高瀬何も覚えてないし。言っただろ、話半分に聞いてたらいいって」
「……」
「話はそれだけかな。明日も学校だしもう電話切るぞ」
「えっ?ちょっ、まだ聞きたいことが」
「…なんだ」
宮本先生が続きを促すので俺はごくりと息をのんだ。ーーひとつ聞きたいことがあった。
「その転校生って、…名前なんて言うんですか」
俺の問いにしばらく沈黙が続いた後宮本先生がゆっくり口を開いた。
「…雪坂達也だ。最後に、くれぐれもその名前を速水に言うなよ」
じゃあ、と宮本先生が電話を切り、繋がらなくなったスマホを机の上に置いた。
「…雪坂」
宮本先生に言われたその転校生の名前を確かめるように呟いた。どこかで聞いた事があるようなその名前に対し、どこで聞いたんだっけ?と思い出そうとするもどうしても思い出すことができなかった。
ーーそしてそれからあの人物が夢に出てくることがぱたりと止んでしまった。
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