その後の彼女と僕の話

 まじ?! ゲームから出てきたっていう美少女と同棲!? で、きっかり五日間でいなくなってて寂しいと。お前まじ頭大丈夫か?! いやいや働き過ぎの現実逃避的なの幻覚だって。末期じゃん、はよ帰れって! 何とかしとくから!

 なーんて同僚に話したところ、面白がられて笑われて終わってしまった。



 ただいまー…

 ガチャリ、とマンションの玄関を開ける。

 誰もいないんだろう。

 ま、そらそーだわな、と。

 ぱたぱた、と軽快にスリッパの音が近づいてくる。


「おかえりなさーい」


 ??


「何そのぽかーんとした顔。何でいるのって思っちゃいました?!」


 少し背伸びをして、彼女は勢いよく抱きついてくる。


「ほっとした顔してくれた」


 ???


「え、どうしてって? ゲームから出てきたなんて嘘に決まってるじゃないですか、何ネボけてるんです? やだ、本当に信じてたんですか?! 仕事のし過ぎですよ、それ過労死レベルですよ」


 ????


「でね、私は君のママの友だちの娘、高橋ひよりなんだけど。覚えてるでしょ? ほら、昔一緒によく遊んだじゃないですか」

「この前うちの家に君のママ来てた時に“息子が一人暮らししてるんだけど、毎日会社で疲れきってゲームばっかやっててやばいっぽいのよ”てグチってましたよ。わたしが用事で来週東京行くんだって言ったら君のママが、様子見てきてくれない? って合鍵借してくれたから来ちゃったの。連絡行ってませんでした?」


 何か余裕なく忙しくてスルーしてた…

 かもしんない…


「いやぁ、先週月曜日、ここ昼に着いちゃったからヒマで。普通に待ってたんじゃ面白くないなーって思ってて。なかなか帰ってこないから、付いてたPCチラッと見たら、わたしの名前を付けたキャラでゲームしてるのを見ちゃったんで、ついからかいたくなっちゃいました」

「そのキャラ画像をスマホで撮ってさ、渋谷まで出て似たような服買って。ついでに美容院で、キャラに似た髪型にしてほしーって言ったらノリノリで美容師さん協力してくれちゃって。コスプレみたいで楽しかったですよ、へへ」


 ゴメンナサイ、とかわいく手を合わす。


「四月からの就職のために不動産巡りに東京に出てきたんですよね、一人で住んでも雷こわいし、寂しいし、ここ居心地がいいし」

「うん、でね、よければ一緒に住まわせてもらいたいなーって、今日は改めてお伺いにきたの、これは本当の話ですよ?! だって連絡先知らないんだもん、自分であんな設定つくっちゃったから聞きづらくなって。ほんとからかってゴメンナサイ! ノリでこの遊びに付き合ってくれてんのかなって思ってたんだけど」


 その時、僕のスマホの着信音が鳴り、電話に出る。


「あ、きみのママから電話? ね? ほーら今言ったこと真実だったでしょ?! 面倒みてやれってうちのママもノリノリで了承してくれたのですっ」


 ひよりは俺の母から預かった鍵を手に、チャリ、と鳴らす。


「あ、おかん、勝手に人の家の鍵を渡すんじゃねぇぞ、とかいう顔だ… やっぱ一緒に住まわせてもらうの、ダメ、かな…」


 拗ねた顔をする。

 僕は思わず、ぶんぶんと首を振った。


「いい? いいの?? わーい! ほんと?!」


 嬉しい顔をしたひよりに抱きつかれて押され、足がふらつき、そのままソファに押し倒されたかたちになった。


「やっぱきみ、面白いね、昔から好きだって思ってたけど。やっぱ今も好きみたい」


 ひよりは軽く、唇にキスをした。


「改めて、よろしくお願いします。これからちゃあんと料理も上手くなりますからね。夏が来たらお祭りも連れてってくださいよ、約束!」

「少し強引で、クセが強めの彼女、なんてのもかわいいでしょ」


 ふふ、といつものようにいたずらっぽく笑いながら、僕をみつめて耳元で囁く。


「とりあえず今夜、先週の続き、する?」

「もう、添い寝だけじゃ我慢できないでしょ?」

「今夜二度目のちゅーとその続きは、ベッドの中で、ね」



・・・・・・・


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ワケあり彼女は今夜もかわいい 〜リアルな添い寝で癒しますっ〜 haru. @matchan0307

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