このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(325文字)
スノードームが見せる不思議な世界と、現実を愛せないひとりの少女。ふたつの世界が交差して、溶けて、混じり合う。その果てで、彼女は探す。自分を救ってくれたものを。雪の静けさがすべてを包み込む、しんみりとした物語。
入れ子構造というか、双方向型というか、リンク型というか。スノードームというガジェットを使う事でこんな平穏と破滅を描き出せるのかと、ほわあああとなりました。退屈な日常って、渦中にいるとほんとありがたみが分からないんですけど、有事に全てを失ってからはじめて取り戻したいとなるの、後悔先に立たずとはいえ人類に課せられたきっつい枷だなぁとつくづく思いました。あなたはわたし、わたしはあなた。またメビウスになるのかなぁと少しだけ思ったり。美しく苦しい物語でした。