第1回 カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門
三粂二乙
引きこもり立てこもり記
部屋がない私は家族との境を知らず自分を知らなかった
ワンテンポ遅い私はどことなく周りと距離が空いて苦しい
片付けを出来ない母に捨てられる不安を胸に過ごした日々よ
ゴミ部屋の一つを勝手に自室にしてゴミでバリケードを作る
鍵のない部屋は不便で夜通しにドアが開かない研究をする
朝が来て怒号を子守唄にして眠る昼には起こされるけど
苦しいや悲しい、辛いには理由があるか自分でもわからない
無理矢理に食べさせられる朝食と昼食のどっちつかずな食
親付きで登校をする着いたあと親の背中を見届け下校
二時間もかかるところに通うのを体感で知る徒歩での帰り
心配と不安が混じる罵声など聞かない自分を守るために
バリケード作りのときに見つかる誕生日プレゼント赤い服
プレゼントだから必ず喜ぼうと咎められた八歳の春
いつまでも諦めないで開くドアだから押し入れに隠れてみる
押し入れの中は暗くて外部とは区切られているような安らぎ
暗闇に光が射すということが希望だとは限らないこと
居場所など家にはないと午後7時ブックオフ行く閉店8時
仕方なく寒空の下彷徨ってコンビニ前の不良を避ける
通ってはいない保育園の遊具のかまくらの中で朝を待つ
当たり前だけど家よりも孤独で明日も部屋に立てこもろう
第1回 カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門 三粂二乙 @3kume2otu
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