第4話 アイドルになるために

 顔合わせをして、ついに奈緒はアイドルをすることに決定した。けれど、一つここで問題が生ずる。そう。それは…



              


 私が知っている限り、アイドルは可愛くて尊くて、儚くて…そんなイメージがある(※人によって違います。)


 では、私はどうだろうか。運動神経がいいともいえない。最近は怠けていたため、少し太ってしまっている。それに、可愛いといえる服を持っていないし見た目など気にしたこともなかった。


『よし!』


 勢いまかせでお金や必要な物などが入ったカバンを持ち、外に出て近くの駅まで歩く。電車に乗り、いくつかの駅を通り過ぎついに目的地へと到着する。


 張り切って、デパートへ足を踏み出した。




               ◇   ◇   ◇


「お客様~、こちらはどうでしょうか?」


「いいえ!こちらがもっとお似合いになるかと」


 バチバチと店員さんたちの火花が散る。


 なぜこうなったのかというと…


 ①デパートの服屋に奈緒が入る。


 ②店員さんたちに奈緒(美少女)が見つかる。


 ③なぜか、店員さんたちは奈緒の服を選びたがる。


 ④奈緒のファッションショーが始まる。


 そして、こうなった。


「ま、まぁまぁ。落ち着いてくださいよ…」


 私は苦笑いをしながら店員さんたちを宥める。だが、止まる気配は一つもない。どんどん言い合いがヒートアップしていく。


 奈緒は言い合いの真ん中でどうしたら止められるのか悩んでいると…


「はいはい!お姉ちゃんたち!お客さんが困っちゃってるよ!!」


 聞き覚えがある声が後ろから聞こえてくる。すると、その人の声で言い合いが面白いぐらいにピタっと止まった。


「「す、すみません、お客様」」


 二人はそろって私に頭を下げる。


「い、いえいえ!!気にしてないので大丈夫ですよっ」


 私がそういうとほっとしたような顔で店員さんたちがこちらを見た。しかし、すぐ表情が変わる。ワナワナとして私の後ろを指さした。


『?』


 不思議に思い、後ろを振り向こうとすると…


「なーおーちゃん!!!やっぱ可愛いね~!!!」


 すごい勢いで後ろにいた人物が抱き着いてきた。私はびっくりしてその場から逃げ出そうとするも、その人はすごい力で抱き着いていて離れられない。


「だ、だ、誰?????」


 そういうと、いきなり私を離した。するとそこにいたのは、同じグループの篝 凛空だった。プクゥーっと顔をして私に怒ったようにいう。


「ひっどぉーい!私覚えてたのに~!!凛空だよ!凛空!」


『あ。どうりで』


 心の中で合点がいく。聞き覚えのある声だったのもそういうことか。と納得していると、一つ疑問がわく。


「篝さんはなんで、ここにいるの?」


「他人行儀だなー!凛空って呼んでよ!んーとね。ここ、うちの店なの。」


 名前呼びがいいらしい。おうちの店ということはいてもおかしくない。


「じゃあ、私も聞くね!なんで奈緒ちゃんはここにいるの?」


「えっと…」と奈緒は口ごもる。おしゃれや体系を気にしてるからここに来ただなんて言えない。言いたくもない。


「服…とかメイク用品を買いに来たんだけど…なにがいいかわからなくて…」


 『これならいける!』と思い咄嗟に思いついたことを口で言う。すると、凛空は納得したように「へ~」といった。


「じゃあじゃあ!私が選んであげる!!!ついてきて!」


 そう言われ、引っ張られるようにしてどんどん凛空は選んでいく。カバンに入っているお金で買えるような可愛いものをどんどんかごに入れていく。

 会計が終わると、「次ね!」といってこんどはメイク用品のお店に来た。有名なリップやアイシャドウ、ビューラーなどいろいろなものがあって驚いた。

 凛空は私の予算を確認すると、凛空おすすめのメイク用品をすべて予算内で抑えた。その技に感服した。


 ひと段落して、デパートの外へとでるともう夕日がでていた。私は横でくつろいでいる凛空に感謝を伝えた。


「凛空…ちゃん。今日はありがとう。すごく助かったよ!」


 そういうとなぜか凛空はこっちを向いて涙を流した。


「?!?!」


 奈緒は驚いてカバンをあさり、ティッシュを探していると


「天使。女神。超絶美少女。love」


 と凛空が言葉を発した。奈緒は急いでティッシュを渡すと、凛空が顔を拭きながら


「奈緒ちゃん、これからよろしくね」


「…うん!!」


 そういって凛空は「またね!」と手を振りながら帰っていった。


 私は、『このチームならやっていけそう』そんなことを思いながら家へと帰った。 

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推しに近づくにはどうしたらいいの!? noa @1208noa

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