策略-18

「私、酒癖が悪いから。多分、その時に取られた写真だと思います」

 さくらは、写真について弁解した。

「へぇ~ 酒癖悪いんですね。一川さん、その点はどうですか?」

 長四郎は、木幡といさくらの関係を調べていた一川警部にそのことを問うと「酒癖より男癖が悪いっていう証言は多く取れたばい」

「だそうですけど、その点について反論は?」

「人を貶めて楽しいんですか? 私、モデルの仕事もしてるんです。自分でイメージを落とす事はしません」

「そんな事言っても、事実、大学でのイメージは最悪みたいですけどね」燐がチクリと嫌味を言う。

「事件の話に戻りましょう。さくらさんが所属する研究室だと木幡さんの殺害に使用されたテトロドトキシン系の毒物を扱いますし、手に入れやすい。そして、それを第三者に渡して殺害させる事も可能です」

「それって、探偵さんの妄想ですよね。私が毒物を盗んだ証拠でもあるんですか?」

「これ、見てください」

 絢巡査長はそう言いながら、研究室で管理されている毒物の使用量が記載されたノートのコピーを手渡す。

「そのページは、木幡さんが殺害される三日前にさくらさんが毒物を実験に使った記録が残されたページです」燐が説明する。

「私が毒物をこの時に盗んで使用したと?」

「はい、そうです」即答する長四郎は続ける。

「それで、そこに記載されている量と現在の量が一致しないんです」

「え!」

 さくらは思わず驚きの声を出してしまう。

「この記録には、使用した量と容器に入っている量の値が一致しているかを記録しなくてはなりません。しかし、今現在の量はというと」

「これです」

 絢巡査長が研究室で測定した現在の容器に入っている量が映った写真を見せる。

「私が使った後に誰かが使ったんだと思います」

「それはないですよ。だって、研究室全員を集めて証言を取りましたから」

 燐がそう反論すると、さくら下唇を嚙み悔しがる表情見せる。

「どうです? 何か反論はありますか?」燐がそう問うと、舌打ちだけするさくらは深呼吸して「それで、彼をどうして殺する必要があるの?」と逆質問する。

「ああ、それを忘れてました」

 電話の向こうに居る長四郎がそう言いながら指パッチンをしたと同時に、絢巡査長が高島さくら被害者の会と書かれた紙をさくらに見せた。

「これは、あなたから頂かれた男性達が発足しようとしていたものです。その発足人が殺された木幡マイケルさんだった」

「そんな事で、私が殺すとでも?」

「殺さなきゃ、今の仕事は続けられないでしょ?」

 長四郎のその言葉に、さくらの顔が歪む。

「ま、毒物を入手したのはあなたで、実行犯は俺達を襲った二人かなぁ~と言うのが俺の推理です。それと、木幡さんをストーカーに仕立て上げれば被害者の会も自然消滅すると踏んでの犯行ではないかと」

 長四郎がそう言い終えたと同時に、絢巡査長のスマホに着信が入る。

「はい。はい。分かりました」電話を切ってさくらにこう告げた。

「共犯の二人は、逮捕されました」

「ま、その二人が自白するのも時間の問題でしょうけど。そういうことで、じゃ」

 長四郎はそれだけ言って通話を終了した。

「ま、取り敢えず任意で話を聞かせてもらいましょうか?」

 一川警部の問いかけに静かに頷いて、同意するさくらだった。


「あーあ、退屈だ」

 長四郎はそう言いながら、病院のテレビを見る。

 テレビでは、高島さくら逮捕のニュースが流れていた。

 結局、逮捕された健人と武彦がすぐに自供し、高島さくらも観念したのかさくらも自身の犯行を自供し逮捕され今や世間をにぎわす一大ニュースとなっていた。

「また、それ。何百回目だよ」リンゴの皮むきをしながら燐は文句を言う。

「何百回でも言ってやる。それよりラモちゃん。なんで当たり前な感じでリンゴ剥いているの?」

「健気な女子高生がお見舞いに来てあげてるのに、それはないでしょ」

「お見舞いって・・・・・・もう、来ないでください」

「ムカつくぅ~」

 燐は長四郎の口の中に無理矢理リンゴを突っこむのだった。


                                    完

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探偵は女子高生と共にやって来る・シン 飛鳥 進 @asuka-shin

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