特別な朝

小槻みしろ/白崎ぼたん

特別な朝

黄帽きいぼうをはずしひたすら眺めてた今はスマホをかざしてる空


暖房に扇風機までつけているタオルにおうと言うひとがため


いつだって事後報告で秋は来る布団をはねずに朝まで寝てた


どうどうと雨が空気を割る音に夢の扉をたたかれている


いつだって心は水のごとくせよよどむと腐る星に生まれる


あの川で流されなんか生き残る幸か不幸かいまきっとこう


夢の中あてどなく店をまわってた半分やった宿題を持ち


「大丈夫誰もあんたを見てへんで」わりにダメだし的確やんな


いろづいてほころぶ蕾のように明日はきたる夢のあとから


春はまだ遠しそれでもあたたかな今日の日差しは特別な朝


うちこわす音がずっと響いてる咲かぬ隣家の椿は二度と


あたたかな心でいたいかじかんで結露さえも凍えた夜は


人はその声を惜しいと思うだけ人魚のヒレは海底かいていで泣く


朝からずっと雪をとかしてるデッキブラシの音湯をかける音


鬼は外福は内とて豆投げる縁起にドアを強く閉める母


夢を見たベランダ女子校生たちがずらり首を吊られてる夢


弁当の中身がコケる夢を見る故意じゃないのに気まずい朝だ


あきらめるなあきらめるなと走りゆく夢の影はきっと私だ


やるせない朝をのりこえ生きていくひとりぼっちと自立は違う


雨がふる夜明けはしずか湿ってる私は布団をはね眠ってた

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特別な朝 小槻みしろ/白崎ぼたん @tsuki_towa

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