白華繚乱

白華繚乱

万彩（まんさい）の 嚆矢（こうし）とならむ 辛夷（こぶし）かな

《辛夷：仲春》

嗣（つ）がれゆく 白詰草（しろつめくさ）の 冠（かんむり）よ

《白詰草:晩春》

快晴（かいせい）に 白藤透（しろふじす）かし 八王子（はちおうじ）

《白藤：晩春》

道草（みちくさ）も 薺（なずな）と識（し）れば 有難（ありがた）く　

《薺(の花)：三春/仲春》

繁縷小（はこべらち）さくも 勁草（けいそう）の感（かん）あり

《繁縷：三春》

畢生（ひっせい）は 斯（か）くあれかしと 海芋咲（かいうさ）く

《海芋：初夏》

思春期（ししゅんき）に 肖（に）た危（あや）うさの 鈴蘭（すずらん）よ

《鈴蘭：初夏》

十薬（じゅうやく）の 苞一（ほうひと）つのみ 陰（かげ）りけり

《十薬：仲夏》

泥濘（ぬかる）みて 山芳烈（やまほうれつ）の 梔子（くちなし）ぞ

《梔子：仲夏》

茉莉花（まつりか）の 夜気（やき）を呑（の）み込（こ）む 匂（にお）ひかな

《茉莉花：三夏》

通学路（つうがくろ） 年年歳歳（ねんねんさいさい） 蕎麦（そば）の花（はな）

《蕎麦の花：初秋》

木槿散（むくげち）る 「ヒノマル」は憂国故（ゆうこくゆえ）か

《木槿：初秋》

初恋（はつこい）や 白粉花（おしろいばな）の 透（す）き通（とお）る

《白粉花：仲秋》

銀木犀（ぎんもくせい）の 謙虚（けんきょ）に薫（かお）るぞ佳（よ）き

《銀木犀：晩秋》

雪白（ゆきじろ）の 嵯峨菊（さがぎく）に聞（き）く 真言（しんごん）よ

《嵯峨菊：三秋》

柊（ひいらぎ）や 指（ゆび）を切（き）っても 花（はな）を手（て）に

《柊：初冬》

山茶花（さざんか）や 見慣（みな）れた紅（あか）より 野（の）の真白（ましろ）

《山茶花：初冬》

花八手（はなやつで） 第六感（だいろっかん）を 刺激（しげき）せり

《花八手：初冬》

冬至梅（とうじうめ） 銀（ぎん）の世界（せかい）も 折（お）り返（かえ）し

《冬至梅：仲冬》

水仙雛（すいせんひな）の顔（かお） 吾人母（ごじんはは）の顔（かお）

《水仙：晩冬》