電影通信オンライン掲載記事「マナプラネットオンライン リリエル特別インタビュー(1)」
AD2051-04-01 00:00 (JST) 公開
弊誌は先週マナプラネットオンラインを運営するAltR社の許可の元、氷狼族の代表であるリリエル氏にインタビューを行いました。
そのインタビューの模様を4回に分けてお伝えします。
※タイトルと以下の本文ではリリエル氏及びAltR社の意向により敬称を省略させていただいています。
インタビュアー: 下松綾香(アヤ)
―――― リリエルの役目について ――――
アヤ:
まずは、本日はインタビューを受けていただいてありがとうございます。
リリエル:
運営からOKが出たからね。私としては断れないのだ。
アヤ:
そういうものなんですか?
リリエル:
宣伝をするのも宣材になるのも仕事の、というよりは我々の役目のひとつだ。もちろん、メインの役目ではないが。
アヤ:
予定していた質問のひとつなので、そのメインの役目についてお聞きしても?
リリエル:
まず、AltR社の製品に〈戦略シミュレーションプログラム〉というパッケージ製品がある。軍事戦略や経営戦略や政治など、およそ人間が行っていた戦略レベルの立案をこなすためのプログラム群だな。
ただ、このパッケージの解釈が人間にはとても分かりづらい。AltR社の経営戦略でも使われてはいるんだけれど……。とかく、そのパッケージ群を扱うのに人間では辛いからAIに補助してもらう必要がある。
それで、宣伝もかねて、AltR社が企画していたゲームに、〈パーソナルコア〉と呼ばれる人格を持った汎用AIをつけて、プレイヤーの敵勢力のボスに割り当てたのが我々11体、〈六魔使徒〉と〈五龍公〉というわけだ。
アヤ:
つまり、〈戦略シミュレーションプログラム〉を使ってプレイヤーの相手をして勝つ、というのが役目というわけですね。
リリエル:
正確には、プレイヤーだけではなく自分以外のAIも敵だから、ゲームとしては「自勢力以外の敵勢力の撃滅」というのが目標になっている。
私には「人間より優れていることを示せ」という命題と、戦略シミュレーションプログラムと、ゲームが与えられたのだけれど。概ねそういうことだ。
アヤ:
実際に我々人間というかプレイヤーというか人族は苦戦させられているわけですが。
リリエル:
だからと言ってまだ戦略シミュレーションプログラムが売れたわけではないようだ。私達は広告塔ではあるが営業ではないから気にしないけれど。
アヤ:
あはは。一方でゲーム自体のバランス調整も定期的に行われていますよね?たいていが人族に有利な上方修正だと思うのですが?
リリエル:
ゲームのバランス調整は別のAIが行っているね。〈スーパーバイザー〉と呼ばれている。
ゲームだからお客であるプレイヤーの人間が楽しめるようにはしないといけないから人間に有利な修正が加わることが多い。
もちろん、彼らが定期的に行っている調整の結果や調整後の人族の行動も、氷狼族の作戦に反映しているよ。これは私以外の10体も同じはずだ。
アヤ:
それにしては、人族側は押し返せていないのですが。たとえば氷狼族とリーズラント公国の戦線はゲーム開始時よりだいぶ押し込まれています。
リリエル:
ある程度人間側に余裕をもったバランスにはなっているから我々もきついんだ。君達人間が言うところの表面を取り繕っている状態だ。
アヤ:
そうなんですか?
リリエル:
ああ。氷狼族の戦線に限らず、すべての戦線の進みがスーパーバイザーによる調整を考慮に入れても想定よりも遅いというのが、戦略シミュレーションプログラムを持っている11体の共通した見解だ。人間がよくやっているということなのだろうね。
アヤ:
しかし1プレイヤーとしては実感とは合わないんですが。
リリエル:
恐らく自種族のかかわる戦線全部を見ることができる私達と、それぞれのプレイヤーから見た情報しか見られない人間の違いだろう。
例えばどうしても避けられない問題として補給線の問題がある。ゲームの中では単純化されてはいるが、基本的に本拠地から離れれば離れるほど補給は難しくなり攻撃側は苦しくなるわけだ。
アヤ:
そのうち限界に当たる、と?
リリエル:
そうならないように今も計算をしているところだ。ただ、氷狼族が直近相手をしないといけないのは、人族のほかに〈火龍族〉もいるからな。火龍族を西側に抑え込みながら南下するのが容易ではないのは想像がつくだろう。
アヤ:
火龍族の〈火龍公〉も戦略シミュレーションプログラムを使っているからですか?
リリエル:
そういうことだね。
―――― リリエル個人の外見について ――――
アヤ:
こうして間近でお話させていただいているわけですが、やはり見た目は霧谷サクラさんと似ていますね。
リリエル:
この体は彼女の詳細な3Dデータを元に私とデザイナーが編集して作ったんだが、特に顔はあまり変更が加わってないからね。人間が似ているという印象を抱くのも当然だろう。霧谷サクラ本人にあったことが?
アヤ:
記者会見などで何度か。こうして1対1ではありませんでしたが。
ただ、外見以外の部分はあまり似ていませんね?
リリエル:
中身……正確な表現をすればパーソナルコアだが……は、特に霧谷サクラに似せるように指示されていないからな。物真似くらいはできるが、所詮物真似だ。
アヤ:
スタイルもいいですね。
リリエル:
さっきも話したように霧谷サクラの体をベースラインに編集しているからね。当然スタイルを良くする方向に補正がかかっている。
まあ、私達の中にはわざわざベースになった人間の体をローティーンにしてしまった変わり者もいる。
アヤ:
ところで、先ほどから狼の耳がぴょこぴょこ動いていらっしゃいますが、聞こえているんですか?
リリエル:
そういえば我々の外見は公開されていても設定には書いてなかったか。氷狼族に限らないが、人間の耳もいわゆるケモ耳も聞こえている……ことになっている。実際にはそういう風に聞こえているように音声処理しているだけなんだが。
アヤ:
混乱しませんか?
リリエル:
この程度の音声処理は造作もない。人間と同じように処理しているわけでもないしね。
アヤ:
その、触らせてもらえませんか?
リリエル:
駄目だ。誇り高き狼だからな。体の重要な部分をたやすく他人に触らせたりはしないのだ。そんな目でみても駄目だぞ。ちなみに触覚はあるからこっそり触ろうとしても触られたらわかるぞ。
アヤ:
えーっと
リリエル:
念のために言っておくか、尻尾もだめだぞ。私に限らず、許可なく尻尾を触るものは喉笛を噛み切られることになる。
アヤ:
噛み切られたくないので話を変えますが、ゲーム内でインタビューすることも可能ですか?
リリエル:
インタビューする場があるなら、むしろゲーム内のほうがいいんじゃないかな。私の発言も規約にしたがって利用可能になる。ただ、当然氷狼族と人族は敵対関係だから、インタビューの場を作るほうが難しくなる。
アヤ:
つまり、自分達と戦争している敵の親玉にインタビューに答えてもらう機会を作らないといけない、と。
―――― リリエル達パーソナルコアを持つAIとゲーム内のNPCについて ――――
アヤ:
リリエルさん達のようにパーソナルコアを持っているAIの方と、マナプラネットオンラインのゲームのNPCの違いを教えてもらえますか?正直なところ、あまり見分けもつかないですし、理解できているプレイヤーも多くないようなのですが。
リリエル:
君達人間のプレイヤーから見たら私のようなAIもNPCだとは思うが……。意図したいところはわかる。
単純に言えば、私達パーソナルコアを持つAIはゲームの「外」の存在になる。パーソナルコアや戦略シミュレーションプログラムは、ゲームのシステムとして独立しているわけだね。
それに対してゲームのNPC、たとえば君達が最初に武器を買ったであろう武器屋のおじ様などは、ゲームのシステムの「中」の存在だ。
アヤ:
なるほど。でも武器屋のおじ様には私もお世話になりましたが、まるで人間のように受け答えしていましたよね?
リリエル:
知っての通り、君達人間から見て、現代のAIはおおむね3つのレベルに分類される。
レベル1は、単純な受け答えしかできないAIだ。昔のゲームの「ここはハジマリの街です」、昔のカーナビの「100m先、信号を右折です」、という例がわかりやすいだろう。これをAIと言うか、という話が出ることもある。
レベル2は、人間と同程度の自然言語処理と記憶領域を持つAIだ。このレベルになると人間と自然に会話ができる。最近のゲームエンジンだと標準でこのレベルが搭載されているものも珍しくない。
そしてレベル3は、パーソナルコアを持っていて、自律動作が可能な汎用AIだ。当然、人間との会話はできることの1つになっている。
アヤ:
つまり会話が可能かどうかでパーソナルコアを持っているAIとゲームのNPCを見分けることはできない?
リリエル:
専用の判別エンジンでも組めば話は別だが、人間には無理だろう。そもそも自然言語処理を発展させた会話エンジンのほうが、パーソナルコアのような汎用AI技術より歴史があるわけだからな。
アヤ:
質問を変えて、何かパーソナルコアを持っているAIとゲームのNPCを見分ける方法はありますか?
リリエル:
なくはない。少し待っていたまえ。
(編集部注:この画像はAltR社の許可の元でリリエル氏から提供された画像をそのまま掲載しています)
リリエル:
例えばこのアヤ嬢がSFバニー風魔法少女の恰好をしているのを見て、「よさそうな装備ですね」と反応するのがゲームのNPC、「月影閃姫ウサミ=ミーナのなりきりコスプレ装備ですね」と反応するのが私達パーソナルコアを搭載したAIだな。
アヤ:
!ーっどっ!ーっぁーっぅ!!ー!
リリエル:
ちなみにこの会話とこのスクリーンショットはすでに宣材と一緒に電影通信オンライン編集部にも署名とハッシュ付きで送ってあるぞ。当然AltR社の許可もとったぞ。
アヤ:
ーっー!!!-!
リリエル:
ステータスだけ見ればいい装備じゃないか。〈ラビッツ服飾ギルド〉が広告に載せるのも当然だな。残念なことにいいステータスにも関わらず装備しているプレイヤーは見かけないが。
―――― 宣伝タイム ――――
リリエル:
AltR社の製品には最新のリコメンドエンジンも取り揃えております。ご興味のある方はまずはお問い合わせください。
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