素足の少女

@boosayaka

第1話

図書室の奥深くで眠っているおさげの少女の甘き汗の香


教室に入る刹那の戸惑いはつま先のマイマイ潰さぬように


健康で無防備な膝ひしめきて熱狂孕む初夏の教室


赤い靴踊れよ踊れひたすらに教室の皆に暴かれぬよう


牛乳のヒゲつけた少年走りおり目にサバンナの光宿して


正しいを正しいとして言う友の口元から覗く白き断罪


「まだ何も知らないのね。」と笑いつつ囁く少女のメリットの香


給食の匂い漂う中廊下荘厳な規則毎日刻む


平穏の背後の影に気付きし日少女はカレーを一口残す


ひんやりと百葉箱は今も立つ数多子供の記憶宿して


夕焼けにランドセルごと飲み込まれ下校チャイムと鼻血の少年


約束を破った後の帰り道ランドセルを置きスキップする


夕暮れの児童公園ブランコ揺れポンペイ遺跡に風吹き抜ける


ブランコで加速する世界目を閉じて少女が見しは異国の地平


あの夏のかくれんぼで置き去りのしゃがんだ少女の抜け殻を探す


手のひらで溶けたアポロの色彩は絵の具より濃き無邪気さあって


顔裏で顔溶けるまで嗚咽する言えないことはランドセルの中


ねこじゃらし満ちる空き地に転げ込み教室で失した私を探す


細胞が溢れるほどに坂駆ける少女は夏の呼吸に溺れる


上履きを脱ぎ捨て駆けるグランドの素足の心地を未だ知らずに

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

素足の少女 @boosayaka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ