〔連作短歌〕線香花火と君が好き
あずま八重
ともに愛した花火
ジリジリと音立てほころぶ花びらが、次々散っては溶け消えてゆく。
昔からそんな線香花火が好きで、さゆりも共に愛でてくれてた。
ゆったりと流れる時間。幸せで幸せで、また買いに行くんだ。
傘を差し、雨音を聞きながらやる。そんな夏夜もあったっけなあ。
ふるえる手。ぽたり落ちては火を灯し、ぱちりハジける花見る二人。
月末に決まって3本のチャレンジ。上達までに5年もかけた。
最後までもたせるたびにはしゃいでさ。笑顔マシマシ嬉しさ2倍。
暗がりのキラ星照らす横顔はカワイイままに上手く撮れない。
火の消えた花火も魅力的なのか、顔近づける君に慌てる。
そんなふうに10年間、寄り添ってこんな僕とも生きてくれたね。
段々と寝たきりになるそのサマが、別れを告げる準備のようだ。
花火する僕の心が寒すぎて、光の中にいつかを見てる。
君がもうとなりに居ない現実が寂しいなんて当然だけど、
となりには君が残したハナが居て、子どものころを思い出すんだ。
また君と違う花火を見てるかのような気がして涙が浮かぶ。
ハナとする花火は盆の間だけ。毎日3本、眺める2人。
夕立に慌てて傘を差してから、重なる思い出懐かしいあの日。
雨音と花火の音が混ざり合う。さゆりがそばにいる気がするよ。
さゆりもさ、僕らの花火見てるかな? 見えないけれどそうならいいな。
きっと僕、忘れないよう続けるよ。ハナと線香花火をずっと。
〔連作短歌〕線香花火と君が好き あずま八重 @toumori80
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