Mahal kita 第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部二十首連作部門参加作品
平 健一郎 (たいらけんいちろう)
Mahal kita
朝霧のたゆたうなかに曖昧な舟としてある湖畔のホテル
歯車の軋みながらも確実に力を伝う人形の街
「Mahal kita(マハルキタ)」狐火ゆらぐゴミ山にスカベンヂャーの聖女の言葉
青年の暮らす街区の野良猫の子猫も瞳光らせている
palengke(パレンケ)の果実熟れつつ売られゆく微かな熱の匂いのなかに
夏の樹の木漏れ日に立つ少女待つ日本で暮らす姉の手紙を
偽物の品物並ぶ店先に錆びを磨かれ積み上げられて
空間がずらされているディナーにはワンピースにも花が咲く
アンヘルス記号としての肉体の人間の数あふれゆく夜
太陽の滴としての汗があるただ一本の草となれるか
高層のビルより都市をながめれば地上絵として未完の夜景
僕たちがペットボトルを奪い合うときにスコール降ってきたんだ
泳ぎつつ寝返りを打ついのちありジュゴンの息と放屁のぷかり
待つことに慣れているから大丈夫ことばやさしき虹立つ空に
透明なものを抱えていることに離陸してから気づきし愚者よ
聖書には少女の手紙ひそやかに冬のひかりはテーブルにあり
裸木の街路樹ならぶ通りには人を景色に変えてゆく風
地に満ちよ満ちたる人のただ一人だけを求めて愚者の旅人
治療なき午後の痩せたる手を握る瞳に愚者の顔にじむ
許されて世界と夏の樹の対話遠くことばに重ねられ
Mahal kita 第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部二十首連作部門参加作品 平 健一郎 (たいらけんいちろう) @7070ks
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