僕らが生きる純粋な国

ふみづき透明

僕らが生きる純粋な国

責任も取ってもらえぬ旅空にとうめい色の絵具を重ねる


誰しもが身を削りつつ生きている 削る何かをあみだで選ぶ


「毒親」の言葉あまりに氾濫し薄められてくすべての不幸


あみだくじなどる指先。選択は権利でなくて義務である日々


自由とは重荷だ選択肢の数が不快と腐敗しかないのなら


責任を誰かに持たす限界の成人の歳は引き下げられる


生まれてきて良かった/死にたかった どちらの言葉もリアルじゃあない


ちっぽけなたったわずかの水なのに溺れてしまう。息ができない


責任もなければ保証もされない身 傭兵稼業の飯炊きの朝


敗戦で取り残される兵士でもやっぱり死にたくないって思う


反出生主義が今さら台頭し、それだけ何かを押し付けたくて


今のとこ反出生に有効な反論を見つけられないまま


誰だって謝ってなんてくれないよ 泣く時だって前だけを向け


はなまるを貰い続ける競争の日々を振り向く日々もあるけど


君だって少しは気ままにしてみなよお天気だってこんなに良いから


飴色の酒を干す日よぼくたちは生まれてしまった生きねばならない


酒の場の席だよ全部を忘れなよ 僕らを邪魔するすべてのことを


あの日見た象牙の塔を志し一人は一人の責任を取る


泣けばいい笑えばいいと自らに許せばここは到達点だ


強風が吹きつける荒れ果てた野だ僕らが生きる純粋な国

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕らが生きる純粋な国 ふみづき透明 @232kana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る