1話 後日談

1914年7月 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 某所

 あの日の出来事は、のちに新聞で大々的に報道された。どうやらあの襲撃を命からがら逃げきった後にまた襲撃され、それにより大公夫妻は死亡したらしい。


 オーストリア=ハンガリー政府はセルビアの黒手組が手引きをした可能性が高いと発表したし、今日、セルビアに最後通牒を送ったという速報も新聞に書かれていた。新聞の印刷が早いことに感心しつつも事態は急を要する。


 セルビアとオーストリア=ハンガリー間での戦争は御免だ。「たのむから。たのむから要求を断らないでくれセルビアよ」と娘のレイラ・ドバイアスと祈る。

オーストリア=ハンガリーが最後通牒を送ってからたった数日のことなのにもう一週間くらい緊張しているようにじる。


 「おい!新聞を見たか!」

隣人のモリスが家に駆けこんでくる。

手には「Ектра едитион(号外)」と書かれた新聞が1部。

どうやらセルビアは一部を除き最後通牒の内容を受諾する旨の電報をオーストリア=ハンガリー政府に送ったらしい。膠着状態からの大きな進展だ。

しかしどうやらロシアはセルビア政府を支援し、戦争なども辞さない旨の発言を売り返しているようだ。

戦争になれば私は家族を失ってしまう。病に倒れた妻は既に他界してしまった。

神にすがるようなおもいで無心に願う私の口から言葉がこぼれる、

「娘のレイラだけは長く幸せに生きてほしい」

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無名の人々達 Unknown man @Unknown1208

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