一話
第一次世界大戦。
それは、1914年から1918年まで続いた世界初の大規模大戦だった。
この戦争では、多くの新兵器が登場し、そしてその地に住むすべての人を苦しめていった。
1914年6月28日 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 州都サラエヴォ
ーーオーストリアのフランツ・フェルディナント大公。州都サラエヴォヘーー
新聞の一面にでかでかと書かれている文字を読み
「そういえば今日だったな」 と、私は、立ち寄った酒店で買い物をしながらガラスの向こうにいるスーツを着た男の持つ新聞をのぞき込み思い出す。
しかし、 ヨーロッパの火薬庫と言われている地にわざわざ近づいて来るとはな。
最近このニュースを見かけ始めたころからヤングボスニアのようなユーゴスラヴ主義系組織の活動が活発化しているという噂も出始めた。
テロでも起きるんじゃないかという不安の気持ちと少し様子を見に行きたいという興味の気持ちが、 若干の不安が優勢のまま均衡を保って頭の中をくるくると思っていく。
どうやら、スーツの男性は見に行くようだ。
人々の向かう大通りへと足を進める。
私は不安だった。
店を出た後もちまちまといる人の流 れに逆らい大通りから反対の小さな裏路地へと向かう。
まだ路地でガキに絡まれる方が幾分かマシだ。
自分にそう言い聞かせ路地へと足を進めもう一歩進めば大通りが見えなくなるという所に差し掛かったその時。
「Бежи!! (逃げろ!!)」
大通りから大きな声が聞こえる。
何かと思い振り向くと大公夫妻の乗る車がちょうど目の前を通るまさにそのタイミングだった。
「逃げろ」とは何のことだったのか。そう考えていた。
大公夫妻の乗る車が通り過ぎた後で大きな爆発音がするまでは…。
ドオオオオオオン!!
その音で辺りは静まり返った。
一瞬の思考の後、私は大公夫妻を狙うテロが起きたことに対し動揺しつつも「やっぱりな」という気持ちが湧き上がってくる。
テロを行ったと思われる男が現場から走り去ろうとしているが後続の車から降りてくるボディーガードのような男達を見るに心配の必要はなさそうだ。
それよりも爆弾?の被害にあった人たちは大丈夫だろうか。
助けに行くべきだろうか。
幸いにも包帯の巻き方の知識くらいはある。
しかしまだ残りのテロリストが居るかもしれない。
私は頭の中で怒涛の連想ゲームのようなものを行いながら、最終的には逃げるという判断をした。
しかし、通りを進んで行くとあまり進んでいないのに酒を飲みながら談笑する人々等の姿が見られる。
なんて危機感が無いんだと感じながら家へと向かう。
しばらくは家から出ないほうが良さそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます