「滅び」の一語 種にして

知之宮みさと

「滅び」の一語 種にして

明日には たわわな知恵は絶滅し イヴもアダムも首を吊るでしょう



絵空事 当たる当たらぬは八卦と他生事ひとごとにせし ホモ・サピエンス


川か乳か問わず銀河は書き換わる 死にゆく神の凝血のくだ



心から妨害電波を発しても届く 忌々しきテクノロジー


おはようと 微振動する君の背を 燃え尽きそうな金星ルシフェルが見る


れたての ドリップ全部墜ちるまで 世界も待ってくれればよいが


あ、わかった、お日さまがいない!名も知らぬ子の間違い探しは預言



ヒトよいざ 残り火宿る芯あらば観測せよ くて原理は在り 


いっそもう 元素に還り太陽にとろけたほうが しあわせだったか



安息日 この期に及んで大層な人工光おわします午後に


群がって焼けた虫のような死体を踏みつけては いつもの店へ


結局は 食材、日用品、わたし、逃げられないなら同じだよね


新鮮な「滅び」の一語 種にして 明日の晩は餃子にしよっか



ただ此処に現象の幕落つのみを なお自業に収めるか 人よ


眩しくて ふたり好みのカーテンを引いたところで 生はえない



きれいだね、夜だったもの その声も僕の未練と対消滅し、


終わりとはかくあるもの と 即席の悟りこじ開けられくうとなる


違いから生じたことであんなにも自己嫌悪は世をつくっていた


一刹那 膨れ上がった死の色が 爆ぜろプシュケー 続け開闢かいびゃく



誰もみな誰とも知らぬ己との核融合を繰り返す 明け

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「滅び」の一語 種にして 知之宮みさと @chinomisa

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