11-1:研究はわからない、進路も決まらない
第11章(大学時代③)
全てにおいて迷走する自身と、社会への一歩を踏み出す彼女
大学は、小学校から高校までと比べれば、圧倒的に自由なものである。所属が工学部で、時間割の組み方にいくらかの制限があった事により周りからはちらほら「全然自由じゃない」という声も聞こえたには聞こえたが、僕は可能な範囲で自由を謳歌していた。しかし、4回生にもなると、どのような大学・学部であれ、卒業論文との闘いが待ち受けており、過酷な道になってくる。
僕の所属学科の名前は「電気電子工学科」…この名前だけ聞いてどれだけのものがイメージ出来るかは、読み手次第なところがあるだろうが、それにしても初めに与えられた四十程度の選択肢は多岐も多岐だった。教授達が色とりどりの研究室紹介をする時間が終わった時、大抵の人間がある程度行先を絞っている中、僕はただ「どれも面白そう」としか思っていなかった。希望は第七まで挙げられるため、いくら成績が良い順に行先が決まるとはいえ、余程の事が無ければ書いたうちのどれかには行けるだろうし、とさえ考えていた。実際その七つの希望をはみ出る事は無かった。
「どんな場所に行き着いても、ほぼ0からの研究生活でも、出来るだけ楽しく、新発見を喜びつつ」そんな無謀なまでのポジティブシンキングは、逆境に強くて弱かった。このスタンスだと、精神面で穴が空くことはまず無い。どれだけ研究がわからなくても、毎日が新鮮で、興味深い事の連発だから。しかし一方で時間というのはただ淡々と過ぎるもので、楽しくやっていた僕には卒業後の進路だとか色々と考えなければならない事が刻々と迫ってきていたのである。
Dear my beautiful season Love wing Mar @MarMaruT
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