第4話「君の手紙はマルバツゲームと共に」

 ジェニーがフランスに帰国してからの日々は最悪でした。

 気分も落ち込みましたし、あらゆるものが手に付きませんし、大好きなチーズケーキも喉を通りません。

 友達や両親なんかは、仲の良かったジェニーが帰国してしまったので、私が落ち込んでいる––––と思っているみたいですが、実際はもっと複雑です。


 ……帰国するなら、一言くらい言ってくれても良かったのに。

 確かに、私はジェニーにとって良くないことをしちゃったかもだけど、帰国するなら何か言って欲しかったです。

 連絡しても、音信不通ですし。

 拒否するにしても、こんな風に拒絶するのではなく、言葉でちゃんと言って欲しかったです。

 あ、言葉通じないんでした。


 そんなある日のことです。

 私宛に一通の手紙が届きました。

 青と赤で縁取られた封筒、エアメールです。

 差出人は––––ジェニー⁉︎


 私は急いで手紙を開き、読みました。

 ローマ字で書かれていた手紙は、日本語と英語が混ざっており、文法もめちゃくちゃでしたが、何とか意味を理解することが出来ました。


 まず、直ぐに連絡出来なくてごめんなさいと。

 気が動転してしまい、どうしていいか分からなくなってしまったこと。

 なので、この手紙を書くのに時間を必要としてしまったこと。

 連絡手段が手紙になったのは、フランスの学校の校則で、スマホの使用を禁止されているとのこと。

 実はあの日が、帰国前日だったこと。

 そのことを何度も伝えようとしたが、言えなかったこと。

 お別れするのがとても辛く、中々話が切り出せなかったこと。

 フランス式の挨拶で、私を脅かせてしまったのを、申し訳なく思っていること。

 そして最後に、横線2本と、縦線2本が引かれおり、真ん中には––––真ん中には、◯が書かれておりました。


 それって––––何ですかね。

 ……解釈難し過ぎませんか?

 私は、笑みを堪えることが出来ずに、顔を伏せました。

 だって、その下に「私もあなたが大好き!」と書かれたから。


 私は、浮かれた気分でエアメールの送り方を調べて、手紙を書きました。

 手紙の最後には、縦に2本、横に2本線を引いて、真ん中にジェニーの◯を書いてから、右上に×ではなく♡を書き込みました。


 今度のゲームは、一体どちらが勝つのでしょうか。

 とても長い戦いになりそうですね。

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私とキスとフレンチガール 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei

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