短歌20首連作 踊るひとたち

畳川鷺々

踊るひとたち

まわりつつ汗をかきつつ熱を撒く そうね、地球も踊っているね



青春がいつ終わったかわからずに光のなかできゃーきゃー踊る



踊る阿呆を見ながら踊る阿呆になろうなあきみ一緒に阿呆になろうよ


手の甲にひかる淫紋刻まれて扉の奥へこれからわたし


「性奴隷?」「全然ちがう」「音奴隷?」「おんどりゃあ好きに踊りさらせや」


慈しむような視線に絡まったわたしの踊りがいびつでかわいい


狂うほどたのしい地獄わたしたちここで千年踊るがいいわ


信仰はあくまで音に捧げられ回すあなたは供物としての


その音はもう生まれない 空間をぼくらを更新してはまた次の


背から伸びるあのレーザーになら灼かれたい出来ればあちらのピンクの彼に



月面に踊るうさぎが杵や臼蹴とばす夜に攣る大腿筋



キックに腹を殴られてスネアにこめかみを撃たれてシンセのメロに攫われてあれ、ここはなに色?なんかい死んだ?



印鑑をきれいに捺せない君と聴くエレクトロジャズに揺れて常夜灯



波に抗ってますか ジンバック飲んでふかす煙草 転調 靴の中で指ぜんぶばたつく



雲へ向け羽搏く鳥に憧れた彼の動きは新種のなにか



イカした奴だね裁きの朝に十本の震える足を活かしたタップで



かといってなにに対する罰だろう致死量の音浴びて累々



夜を徹し音と戯れその果てにうつくしすぎる睡魔と踊る



朧月 弱い犬ほどよく踊る それはとってもいいこと、ね、ね



あさっては晴れるといいね泣きながら踊るひとたちみんなだいすき

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