幕間 第2話 友達第1号
はじめまして。私の名前は
女神様が仰られるには、まずこの世界は中世ヨーロッパや近世ヨーロッパ、をベースとして様々な場所の様々な時代の要素を取り入れ、さらにそこへ魔法やら魔術やら色んなものを混ぜ混ぜして割らなかったような世界で、様々な時代の場所が混ざり、地球にはない不思議な力や生物を注ぎ込んだことで当時はなかった様々な食材や技術が溢れている……らしいです。
また、この世界は色々な世界の人間が度々転生させられて技術の発展を促しているそうです。そして、その転生した人間を「転生者」と呼びます。私はその転生者として、世界の発展を促すのが役目らしいです。
「転生」は、神様とか悪魔とかに願いを叶えてもらった存在に代償として転生者を育てさせるらしい。もちろん、育てさせる生物と転生者の種族は同じだし、遺伝子的にも親子関係が証明される造りになっているらしい。
また、時々……ほんと〜〜〜に時々、魂関連でミスっちゃった女神が出てくることがあるとのことです。ミスっちゃった女神は大抵の場合、隠蔽しようとします。隠蔽するためにその魂に「転生特典を持って異世界転生」することを頼み込むそうです。
断られたらそこで済むのですが、断られなかった場合、条件に合致する適当な生物を探してそこに魂をぶち込んでしまうのです。
当然、元々その生物の体に宿っていた魂はその体のどこかに追いやられてしまい、人格やらなんやらがすげ変わってしまうらしいのです。この状態の事は転生ではなく「憑依」と呼ぶそうです。
ですが私は馬鹿です。馬鹿なので難しいことは考えられません。自分の感情に従って行動することしか出来ません。
なので、私は私の知っていることをこの世界に合わせて実現させる事が出来る賢い協力者が必要です。なので私は魔術や魔法を学ぶ為の学校、「王都アルジェント学園」に通い協力者を見つけることにしたのです。せっかく貰い受けた第2の生、役目くらいはしっかりと果たしたいのです。
そう決意したはずなのに!!!! なんとわたしは遅刻してしまったのです! 私が馬鹿なのは知っていましたがここまでおバカさんだとは思いませんでした……。
学園に行くまでに乗る蒸気機関車の発車には間に合いましたが、誰もいないコンパートメントがもうありません。私は人に話しかけるのが苦手です。コミュ症というやつです。人と話すのが嫌なのではありません。話しかけたとして、嫌だったらどうしよう、嫌われてしまったらどうしよう。話題が見つからない。そんな不安が脳内を巡って話しかけれないだけなのです。
ですが、いつまでもうだうだしていては学園までの道を廊下で過ごすことになります。それは嫌です。それに私も相手もまだ子供。取り返しはつきます! いざゆかん!
近くにあったコンパートメントの扉を開け、中を覗きます。
「そこの貴方、ここに座ってもいいかしら?」
あ、ちなみにこのお嬢様風の高飛車な口調はデフォルトです。この生に生まれ変わってから、なにかを話すとこんな感じの口調にいつの間にか変換されているだけなのです。だから引かないで!!!
「いいですよ!」
アッ天使!!? 可愛い!!! 艶のある黒髪と紫水晶のように輝くその瞳!!! 顔立ちもとても可愛らしい。しかもポニーテール……だと!? すっごく丁寧で細かい金の糸の刺繍が施された赤色のリボンを使ったポニーテールショタ!!!! というか制服がズボンじゃなかったら性別どっちが分からなかったぞ多分!!! かわいい!!!!
………………はっ!? 一瞬オタクの私に乗っ取られていました!! お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。はい。
…………自己紹介は大切です。まずは彼の名前を聞かねばなりません。
「貴方の名前は?」
「ボクはネージュ・アメティストです。よろしくお願いしますよ!」
名前も元気いっぱいに名乗る姿も可愛い。……というか、アメティストって、もしかして幻影の魔術の名家と呼ばれるあの? そういえば目も紫ですし……。
「あら、貴方がアメティスト家の天才息子? 私はフラム・エグマリーヌですわ。教育が隅々まで行き届いていると噂のアメティスト家なら、わたくしの名前くらいは知っているでしょう?」
んんんんん単純に「私の名前知ってる? エグマリーヌ家だから結構有名だと思うけど」って言いたかっただけなんだけどなぁぁぁぁ!!!
「はい、ボクはかしこいので知っています。ボク、君のことなんてよべばいいですか?」
ネージュくん賢い! すごい! 普通にフラムでいいですよ!
「気軽にフラムとお呼びなさって。わたくしも貴方の事をネージュと呼ばせていただきますわね。」
お互いに名前呼び捨てとかこれはもう友達なのではないでしょうか。つまりネージュく……ネージュは
「ねえ、フラム。少しききたいことがあるのです」
「何ですか? 貴方はわたくしの友達第1号なので、わたくしの答えられる範囲であれば特別に答えて差し上げますわ!」
「君はテンセイやテンセイシャってコトバを知っていますか?」
「テンセイやテンセイシャ……っんごほっ!? 貴方、ごほっ、どこでその言葉を……!?」
車内販売で購入した紅茶を飲んでいたので思わず噎せてしまいました。
え? え? 転生や転生者!? 何でその言葉を知ってるんですか!? しかも意味分かってないっぽい様子……!
「さいきん兄さんのようすがへんで、やさしくなくなっちゃったのです。兄さんがひとりごとでつぶやいてたのですけど……君はいみを知っているのですか?」
ん? ネージュのお兄さんが最近変になって一人言で呟いてた? ……つまりそれは、誰かがネージュのお兄さんに「憑依」した、ということですか?
転生なら赤ん坊の頃から意識があります。なので転生によって「以前と様子が変わる」という事がトラウマになるような出来事が起こるなどの通常の人と同じ方法以外で起こるのはおかしいのです。
「え、ええ……。あ、あの…………わたくしのお母様のお姉様の御友人の従兄弟のお父様の文通友達の方が教えてくださったの。……えっと…………説明は難しいけれど。……あの…………貴方はどんな意味だと思っておられるの?」
私思ったよりテンパってる……!? 何ですか母の姉の友達の従兄弟の父の文通友達って……!!! 赤の他人すぎる……! 何ですか文通友達って……!
「ボクは、「テンセイ」って言うのはバケモノかなにかで、「テンセイシャ」って言うのはそのバケモノにとりつかれた人とか、じょうたいのことだと思いました。なにかにとりつかれた人はようすがおかしくなるっていいますし……兄さん、とってもやさしかったのにとつぜんかわっちゃったのです」
「…………そう………………」
…………そういえば、「憑依」というのは、元の人格を追いやってしまうものだと女神様は言っていました。その被害者に、まさか出会うとは思ってもいませんでしたが。……そして、それは、ネージュの見解と大差ないものなのでしょう。
「……貴方の予想は、大方間違っていないと思いますわ。……それで…………貴方は、お兄さんを元に戻したいのかしら?」
「はい! もちろんです!」
やはり、家族としては戻したいものなのでしょう。いいえ、家族だけではなく、その友人や知り合いの人達も、戻したいに決まっています。
――――ならば、私は。
「……では、わたくしにも協力させて欲しいですわ。………………少し、聞きたいことがあるしね」
正義感なんて私にはありません。賢い頭もありません。ですが、友達のために動きたい、友達を悲しませたくないという感情ならあります。
「きょうりょくしてくれるのですか!?」
「ええ! …………わ、わたくしの……と、と、と、友達1号ですもの!」
そう。だって貴方は、
「ふふ、ありがとう、ございます。…………あっ」
ネージュは感謝の言葉を紡いだ後、何かに気づいた様な表情をして何かを考え込んでしまいました。そして、何かを決心した目をして、私にこう尋ねました。
「……あの…………ボクの兄さん、まじゅつのさいのうがないんです。それに、はいいろの目をしてる。フラムは……兄さんのこと、みくだしませんか?」
私は賢くありません。私はバカです。なので、灰色の目をしていることが何を指すのかは分かりません。でも、それでも、魔術の才能がない事の意味は流石に分かりますし、彼の言い方からして良くないことであることが分かりました。
でも、私は――――
「あら、そんなことですの? 才能の有無で人を見下したり差別するなんて、有象無象のすることですわ。それに、貴方が助けたいと思うなら、悪い人ではなかったのでしょう? わたくしは人を目で見ただけでは判断しませんわ。その人のことをよく知る周りの人からの評価で判断をするのです」
そう。私は魔術の才能や目の色なんて事はどうでもいいのです。ネージュが助けたいと思っている事が重要なのです。
「……フラムは、すごいね」
ネージュはそうポツリと呟いた後、もう一度感謝の言葉を紡ぎました。
「ありがとう、ございます。……フラム、これから「きょうりょくしゃ」としてよろしくお願いします」
「ふふふふふ、協力者……! 何かいい響きですわね! ……ネージュ、これからよろしくお願いしますわ」
協力者……! いい響きです。……あっ!私も協力者を探していたのでした。
でも、もう探す必要はありません。私よりずっと賢くて、私の知っていることをこの世界に合わせて処理する事ができる人を、もう見つけてしまったのですから。
「あっ、そういえばネージュ、協力する代わりに時々ちょっとしたお願いを聞いてくださるかしら? お願いの内容はその時々で変わりますけれど……」
「いいですよ! ボクにできることならなんでも言ってくださいね!」
今は、まだその時ではないので「お願い」の内容は明かせませんが、その時はよろしくお願いします。――――
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