第2話
「っちゅーことで、頼まれちまったけど…」
俺は依頼主からもらった地図と目の前の豪邸を見比べた。
少し寂れてる建物…おそらく築20年くらいだろう。
外から見た情報と依頼書に書いてある情報は…おん、間違いはねえな。
たまーに嘘の情報を流してくる奴もいるからなー…
今回の依頼者は幾分かマトモそうだ。よかった。
それにしても…
「ここまで人気がないもんかぁ?」
一見すると手入れが行き届いている庭だが、ところどころ荒れている。
外壁もそうだ。これをやったのはおそらく…素人だろう。
しかも昼間とは言え全く明かりが灯ってないってのもな…
「…もっかい夜に来るか…」
しばらく眺めて俺は引き上げることにした。
ひょっとしたら夜にターゲットが戻ってくるのかもしれないからな。
青い空に一度大きく背伸びをする。
「う~ん、こういうのは俺には合わねーな。さっさと帰って寝るかぁ」
「わおーん…なんてな」
深夜0時頃。誰もいない大通り。
いやー…いいね!本当にいい。
月はまん丸のピッカピカ。少しじめっとした風。そして誰もいないという解放感!
本当に夜はいいよ。うんうん。
こんな俺も思わずふざけて犬のマネなんてしちまうくらいなんだからな。
「やっぱ俺は夜の方が調子いいわ~」
なんてルンルンと軽くスキップしていたらいつの間にか、ターゲットの屋敷へ着いていた。
「さーてと、仕事しますかぁ」
俺はさっそく双眼鏡を手に取った。
もちろん、窓から見える屋敷の情報をインプットするためだ。
双眼鏡には暗視機能が付いていて、暗い中でもまるで昼間のようにあっかるく見えるのサ!!
いやー本当にコイツを作ってくれた奴にゃ感謝しかないね
敷地の周辺は少しだけ街路樹が生えているが、その街路樹のはるか高くに塀が建てられている。
中を覗くだけなら鉄の装飾門の間から覗けばいいんだがな。
さっすがに双眼鏡を使うとなると怪しまれるんだよなぁ
取り敢えず俺は近くの街路樹へと登った。
考えてたって仕方ない。俺はバカだからなにか行動を起こさないと
何にもならないんだよ。
ほら、今だって見立てよりも街路樹が高かった。
恐らくだが、建物を建てたときよりも時間がたったから街路樹が成長したんだろう。
こりゃラッキーだ。このぐらいの高さなら全然登れる。
俺は木から塀へと飛び移り、そこから塀にところどころある窪みを使って一番上へと辿り着いた。
取り敢えず一番上に座り、俺は双眼鏡で屋敷を眺めてみた。
しばらく眺めてみたが特になにもなかった。
何にもなさすぎるのだ。
ここまでの豪邸の管理を一人でできるとは思えない。
最低でも50人は使用人がいるはずだ。
だが、人がいる気配が全くない。
・・・・・・こりゃ引っ越してる可能性があるな
依頼料が上がるが確実に見つけるか・・・
それともここで依頼を止めるか・・・
これは依頼主に確認する必要がある。
ま、相談するのは
本当に人がいるかどうか確かめてから、だな。
取り敢えず庭に入って屋敷を一周するかぁ。
新たな発見があるかもだし。
その時だった。
最上階の一番北側の部屋に明かりがついたのは。
その後すぐに明かりは消えたが、俺はその一瞬を見逃すほど馬鹿じゃない。
大体3階か・・・
これぐらいなら跳べるな。
俺はゆっくりと準備体操をする。
最高なことに恐らく相手は俺の存在に気づいてはいない。
こんな状況だったら、奇襲を仕掛けて一気に攻めるのが俺流だ。
屈伸、アキレス腱、軽くジャンプ、最後に足首を回せば準備完了。
最終確認として着地地点をよく観察する。
予想着地地点は頑丈そうか、もしその時に襲撃されたらどうするかetc・・・
まあ見た感じ大丈夫そうだな。
息を多めに肺へ回す。
体中の細胞に酸素が行き渡る。
……
今、ここ!
軽く助走をつけてからのハイジャンプ!!
身体が宙を舞い、俺は重力というしがらみから解き放たれた。
あー・・・やっぱ俺生きてるんだよなぁ
飛ぶといつもこんなことを考える。
このまま何のしがらみからも解放されて、どっか飛んでいけたら最高だろうな。
その心地よさも束の間、やはり俺は重力に囚われてしまった。
だが目標地点は目の前。
これだったらいつもよりもきれいに着地が出来るな。
俺は窓の上の屋根へ音もなく飛び移った。
「もしこれを誰かが見ていたならば、きっとその人はこのように表現するだろう。
『まるで天使のようだった』と。
それほどなまでに彼の着地は見事だった。
だがしかし、そんな彼が誰かに見られるという失態を犯すわけでもなく
美しいハイジャンプは日の目を見ることはなかった・・・。」
はい俺の最高な自己肯定感上げ終了っ!
いやぁね、
恥ずかしながら今までシゴトの腕を褒められたことはなくってねぇ
見られる前に終わらせてきちまったから、なっかなかモチベーションがなくってさぁ。
いやぁwこんな趣味が出来ちまって恥ずかしい限りだよww
「・・・・・・おじさんだあれ~??」
変に幼い声が聞こえたと思ったら、突如窓の屋根の下から体が出てきた。
・・・ちょっとだけ言い訳さしてくれ。
歴戦の殺し屋ともなればある程度のハプニングには驚かないんだけどな。
ちっこいガキのお出迎えはさすがに予想してなかった。
「おじさんって、もしかして…」
少し甘ったるいような幼く作った声が俺の耳をくすぐる。
ひょっとしてこのガキ、俺の正体に気づいt
「殺し屋さん?!?!?!」
死にたがりお嬢と寂しい殺人鬼 @zharu0305
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死にたがりお嬢と寂しい殺人鬼の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます