第3話

 今夜もまた、私はバラバラになりました。

 今夜もまた、あの子はバラバラになったカケラを拾い集めています。

 

 今は慕ってくれているけれど、あの子もいつか、私が毒物であることに気づく日が来るでしょう。


 その時、あの子はどんな人間になるのでしょうか。


 あの子は、わたしの隣で生きています。


 こんな環境で育って、それでもあの子が優しさを失わなければ、それはあの子自身の力と周囲の人たちのおかげです。


 もしあの子が世界を憎むようになったら、それは私の責任です。どうか私だけを恨んでください。


 今夜もまた、私はバラバラになりました。

 今夜もまた、あの子はバラバラになったカケラを拾い集めています。


 以前の傷が治っていないまま、新しい傷を作って。

 そんなに痛い思いをしても、長い時間をかけて集めても、明日の誰かの一言で一瞬でバラバラになるのに。


 それでもあの子は一生懸命に、私の形を戻そうとしてくれています。


 無性に、あの子を抱きしめたくなりました。


 でもアルコールがまわって、体が言うことを聞きません。


 何にも出来ないまま、変わらないまま、成し遂げられないまま、今夜も時間だけが過ぎていきます。

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毒の隣(どくのとなり) 麻井 舞 @mato20200215

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