第2話

 あの子には、私しかいません。

 何て残酷な現実なのでしょうか。

 もはや呪いです。


 私は心療内科で処方された複数の薬を飲まないと、正常ではいられません。


 よく〝優しい人〟とか〝穏やかな人〟と言われますが、本当の私は自分のことしか考えられない薄情者です。

 人に優しくするのは、自分が優しくされたいからなんです。優しくされなければ心がグチャグチャになって、暗い所に落ちていくからです。


 あの子は、こんな私しか頼れないのです。それが本当に辛いのです。


 あの子は良い子です。

 何度もバラバラになる私を、何度でも拾い集めてくれます。

 まだ短い腕を、細い指を、傷つくことを恐れずに伸ばしてくれるのです。


 あぁ、神様。世の中の皆様。

 ごめんなさい。


 私は〝毒〟です。


 私はあの子に暴力を振るいません。

 暴言も吐きません。

 衣食住を与えています。


 あぁ、だけど、だけど。


 欠けています。1番大切なものが欠けています。


 毎晩、狭い部屋の隅で、酒を呑みながら、魚が死んだような腐った目で宙を見て、バラバラになっている。これほどみっともない姿をあの子に見せて、しかも拾わせているのです。


 そんな私の生き方そのものが、あの子に少しずつ毒を注いでいるのです。


 本当は、私が守らなければならないのに。あなたがバラバラにならないように。



 

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