詩 「一寸の言霊に赤い糸を」

@aono-haiji

第1話 詩 「一寸の言霊に赤い糸を」


信じられる人が置いていった

寸珍すんちんの玉手箱

目を閉じれば 背中からふれてくる

いくつもの手たち

そっとしてあげよう

青色の玉虫だけは

いつまでも生きていられるように

祈って

坂の下には

かぞえられるだけ

微笑みが見上げてる

ありがとう

誰の言葉でもなかったね

じゃあ 行くね 子供たち


おぅ——————ら

   どぉ—————ふぃにぃ—————………



あなたのいる世界には 時はない

だから 手を伸ばせば あなたの

白い 冷たい わきにふれる


この手の先 わたしは

わたしでいる以前の なにかに戻っている

細く 冷たい なにか

宇宙を生んだ その人のこころを

しっかり分かってあげられる わたしになる


なにかが生まれたことで

いちばん最初に さみしさを知った

その人の痛みを

この手のひらに包んで もって帰りたい

でも やっぱり 涙がとまらない

生まれたその時

最初の言霊ことだまは なぜ「なぜ」だったの…



行きます

あなたの無念をたどって

この線路は歩くためにある

斜めにそそがれている光が痛いのは

わたしじゃない

たむろする神様たち 膝を立てて見ている

そこで 手を抜いていて


こっつり  ぱったり

     こっつり  ぱったり


じゅうぶん急いでますよ   これで


会いにゆくから あなたに

あなたの 母になるために

知ってるわよ 罪を犯しにゆくこと


ひとつの言霊の生まれと

宇宙の生まれは

どちらが先か

わたしは知っている

だから この赤い糸をもってゆくの


ぜったいに ぜったいに

間違ってはならないのだから

ぜったいに

やり直してみせるから

わたしを殺してもいいから 止めないで


わたしは 赤い糸を ずるずる引いてゆく

いのちをそこに結ぶため


すべてのいのちのはじめに

結びたい たいせつな言霊


ありがとう

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