第37話 言霊の力

頭に流れるだけで考えるという行動を許してくれない。映像が途切れるとともに、俺の視界は戻っていく。瞼が開き、徐々に俺の目に入り込んでくる日光はとても心地が良かった。思考が完全に覚醒すると、俺は目をこすり体を伸ばした。服は試練に行く前の洋服で、先ほどのようにパンイチではなかった。横を見ると立ちながらも、一向に目を開く兆しが見えないアンデレッカさんがいた。一度目を外し周りを見ると、どこかの町の裏路地のようだ。あ、ステータス。俺は今にも気になって仕方がないステータスを開く。


攻撃力・19994

耐久力・9965

体力・7109

魔力・10201


特殊スキル

『無呼吸』『スキル強奪』『鬼神化』『弱点可視化』『スキル譲渡』『混合魔法作成』『呪い削除』『蘇生』『翼活塞』『言霊』


通常スキル

『歩行音抑制』『鑑定』『予測眼』『知識倍化』『運調節』『傷害交換』『柔軟性向上』『防御特化』『気配遮断』『捨て身』『武器鑑定』『武器強化』『治癒魔法』


条件発動スキル

『自動治癒』『自己蘇生』『銃スロー』『体力、魔力返還』『傷害時攻撃力上昇』『理性凝固』


ユニークスキル

『瘴気の器』


『言霊』

自分の言葉に体力を纏わせ、その言葉自体に力を籠めることができる。放たれた言葉を受けた相手はその通りの行動を強制することができる。しかし、体力消費が激しいため何度もの使用は好まれない。


ステータスを開き、真っ先に『言霊』の内容を確認する。うん、すっげぇ強いってことだな。つまり。俺が言ったことが相手の通りになるってことだろ?試練で得られるものって品がいいんだな。そんな考えをしていると、俺の視界の右端に紫色の髪の毛がふわっと侵入してきた。


「そんな一点を見つめているってことは考え事?」

「起きたんですね」


少し頭を後ろに引くと、まっすぐな視線が俺の瞳を見つめていた。少し眠そうにしているのが見て分かる。俺のしていることが気になっているのか、疑問形で俺のしていることを聞いてくる。俺はその問いには答えず、起きたんだという事実だけを口にした。まぁ、アンデレッカさんは俺が考え事してたことに気づいてる様子だし、今更どうこう言う必要もない。


「そんなことより、ここを出ましょ。こんな裏路地らしきところに何分もいたくないでしょ?」

「蜘蛛から出るセリフとは思えませんね」

「蜘蛛でも人化してるから思うことは人よりなのよ」


少し軽口をたたきながらも俺との会話を楽しそうにしているアンデレッカさん。俺はゆっくりと目の前に開けている場所目掛けて歩いていく。


「っ!敵襲だ~!」

「人間と蜘蛛だ!蜘蛛のランクは分からんから近づくな!」


俺が裏路地を出た瞬間に目の合ったエルフに通報された。思わぬ出来事すぎて俺は目を見開き立ち尽くす。しかし、アンデレッカさんは冷静のまま、俺に話しかけてきた。


「大丈夫、この中でもあなたに勝てるのはいないわよ」

「いや、それは承知していますが、急に通報されると思うところがあるというか」

「しょうがないでしょ、エルフの町なんだから」

「そういうもんですか?」

「そういうもんよ」


エルフは、他種族を嫌う傾向にあるのか。割と初めて知った。エルフの奴隷がいるのにこれを知らないのは結構不敬だったか。あとでルーシーに謝っておかないと。とりあえず、謝らないと。


あれ、体が動かん。マジで動かない!


「~っ!」


動かない体に驚いていると、アンデレッカさんが驚いたような声を挙げながら俺を抱きかかえデカい糸の壁を作り出した。全く脳が追い付かない。どういうことだ?俺は何で今動けなかった?そんな疑問を抱くと、その疑問に答えるようにアンデレッカさんが答えてきた。


「おそらく、スキルね」

「拘束スキル的な感じですか?」

「いや、もっとたちが悪いのだと思うわ。私には効かなかったらしいけど...ね!」


俺の質問に答えながら飛んでくる弓を糸で無力化してくれている。初めてだ。キャリーされることは。さすがに、ここまでお荷物なのは嫌だ。動かない体を無理やり動かそうと力を込めた。


......動いた。いや、いつもの何倍も力を籠めないといけないが、動いた。このまま、よし。俺は全く動かない体を無理やり力ずくで動かし、態勢を整えた。この中だと、あの人か。


「アンデレッカさん、糸で矢作れる?」

「え、作れるけど」


アンデレッカさんは真っ白の糸でできた矢を作ってくれた。俺は瘴気の弓を作り、その弓にセット。対照的な弓と矢が、なぜか俺の戦闘本能をくすぐり始めてくる。俺は女性目掛けて射貫く。


女性は避けた。避けたと同時に俺の体の拘束が溶けた。思い通りに動く体に感心しながら、早速スキルを試すことに決めた。それと同時に、1人の男も叫んだ。


「おそらくデビルスパイダーだ!気をつけろ!下手すりゃ死n」

「『動くな!』」


言葉を遮るように俺は『言霊』を発動。俺の声に驚いている人たちは、次第に恐怖を移す顔に変化していった。俺の言動と一気に変わる雰囲気に驚いているアンデレッカさんは糸をしまった。俺は周りを観察、俺にスキルをかけたと思う女性に近づいた。


「ここらへんで、人間族の女性とエルフの奴隷を知りませんでしたか?」

「~っ!?.......知りません」


女性は顔を完全に青くさせ、数秒の沈黙を作った後に知らないと答えた。この反応的に、おそらく知っているだろう。さっき通りに『言霊』使って真実暴くか?それにしては魔力消費と見合ってなさすぎる。どうしたもんか....


「シリル!」

「ご主人様!」


俺の耳に、聞いたことのある声が聞こえた。声の方向を見ると、俺の腹に衝撃が走った。ルーナさん、何でグーパンしてるんでしょうか。やめてください痛いです。


「どこ行ってたの?」

「試練行ってた」

「は?」

「そんな強いは?だけはやめていただきたい、俺だって死にかけてんだ」


まぁ、ルーナから見たら俺は勝手にどっかに行ったやつだもんな。だからといってそこで「は?」は違うぞ。俺だって今すぐに試練の説明者にキレてぇよ。


「ご主人様、ご無事でしたか」

「あぁ、元気いっぱいだよ」

「よかったです.....本当に....」


泣きそうな顔をしながら俺に抱き着いてきた。ルーシーにとっては珍しいことなので、しっかり堪能しておくことにしよう。ルーナさんや、そんなジト目で見つめるのはやめてくれやせんかねぇ。


「ところでシリル」

「どした」

「なんで周りの人は一歩も動かないの?」


......ずっと魔力消費して動かなくしてたのか、俺。アンデレッカさんはかかってないみたいだが、1点をずっと見つめている。見つめている部分に目をやると、1人の女性、女子の方が正しいだろう、女子エルフに睨まれていた。


大丈夫?めっちゃ気まずくないこの空間?



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投稿が遅れてすいませんでした。

いやまぁ待っている人は相当少ないとは思いますが。

書き溜めが無くなってしまい、各内容に困っておりました。

後、新作を書き始めようかも悩んでいたため遅れました。

出来れば新作の方もURLを張っておくので是非見てください。


https://kakuyomu.jp/works/16817330663299111499


決して、書籍化みたいなことではないです!

今後とも、よろしくお願いいたします。

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朽ち果てた国に生まれた俺。魔物しかいない地面這いつくばって生きていたら最強になっていた ふにえる @Nazonotenseisya

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