残光の永遠、あるいは幽霊愛歌

鹿島さくら

残光の永遠、あるいは幽霊愛歌

水平線なぞった赤い指先にかれたままの我が心臓


幽霊の日だというなら出てきてよ、あの日のままの君のすがたで


カラオケで「酩酊」流し思い出す、歌える君のくちびるのかたち


重なった手のひらなぞる敷布の上「今日の夕飯どうしよう」


君がため六文銭を用意するキャッシュレス派の最後のお別れ


黒髪が流れて夜が始まって私を見つめるふたつの銀河


腹の底渦巻く風を口移しあなたの炎で嵐に変わる


デパートの一階のすみで思い出す乳房の谷のシャネルの5番


線香は嫌いと言った派手好きのきみの墓前で線香花火


若葉萌えどこか行こうという君にどこでも良いよと言う臆病


君がまた煮物をもってやって来る、足もないのにつっかけ履いて


その声は我が娘か、とスパチャ飛ぶ。ママをのこして転生せしVブイ


アニソンを歌うと横もハモりだす。203ニマルサンは不在の隣人


入院し浮世離れて独り立つ卒院できない博士の僕ら


菓子箱の赤いリボンのおとむらい。あなたのかたちはいつもやさしい


微笑んで永遠の意味を知らしめてただ去っていく赤き太陽


「ずっと」だと囁く声が張り付いて宇宙が滅びてまだここにいる


指先をかすめた星の熱さがし永久凍土を百年走る


道に咲く花の名、君の面影を忘れてなおも燃えるこの胸


腕をふり「おーい」と言うて走り出し雷雲追い越す子供らの背



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

残光の永遠、あるいは幽霊愛歌 鹿島さくら @kashi390

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ