残光の永遠、あるいは幽霊愛歌
鹿島さくら
残光の永遠、あるいは幽霊愛歌
水平線なぞった赤い指先に
幽霊の日だというなら出てきてよ、あの日のままの君のすがたで
カラオケで「酩酊」流し思い出す、歌える君のくちびるのかたち
重なった手のひらなぞる敷布の上「今日の夕飯どうしよう」
君がため六文銭を用意するキャッシュレス派の最後のお別れ
黒髪が流れて夜が始まって私を見つめるふたつの銀河
腹の底渦巻く風を口移しあなたの炎で嵐に変わる
デパートの一階のすみで思い出す乳房の谷のシャネルの5番
線香は嫌いと言った派手好きのきみの墓前で線香花火
若葉萌えどこか行こうという君にどこでも良いよと言う臆病
君がまた煮物をもってやって来る、足もないのにつっかけ履いて
その声は我が娘か、とスパチャ飛ぶ。ママを
アニソンを歌うと横もハモりだす。
入院し浮世離れて独り立つ卒院できない博士の僕ら
菓子箱の赤いリボンのお
微笑んで永遠の意味を知らしめてただ去っていく赤き太陽
「ずっと」だと囁く声が張り付いて宇宙が滅びてまだここにいる
指先をかすめた星の熱
道に咲く花の名、君の面影を忘れてなおも燃えるこの胸
腕をふり「おーい」と言うて走り出し雷雲追い越す子供らの背
残光の永遠、あるいは幽霊愛歌 鹿島さくら @kashi390
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