僕と僕と僕と僕

度数分布

目覚ましの音が鳴り響く。涎と血の海が一面に広がっている。

どうやら机に突っ伏して寝ていたようだ。


「…作業終わってねーじゃん」


後頭部の痛みに耐えながらそう呟く。

目が隠れるほど伸びた前髪をクシャクシャと掻きむしり、傍らに置いてあったサンドイッチを一口で飲み込む。

面倒くさがりの僕には、少し厳しい。


「はぁ、んじゃやるか」


そう言ってディスプレイの前に座り、ペンを握る。そして眠気覚ましの「#860186」を一口含んだ瞬間、



僕の意識は飛んだ





チャットが進み始める。目の前には沢山の機材が広がっている。


「…で、最近は良い液タブ買ったんで調子いいんですよー」


手を動かしながらマイクに向かって話す。

ヘアピンで止めた髪を揺らし、ずっと作り笑いを浮かべた顔で喋る。

だって僕は、人気者なのだから。


「ふー、やっと配信終わったー」


誰のものか分からない涎と血の海を拭き取り、マイクを切る。憂鬱を吹き飛ばすために「#868401」を舐めた瞬間、



僕の意識は飛んだ





瞼が重くなる。アロマの香りが怖いくらい眠気を誘う。


「…あ、ハエが飛んでる」


ハエを目で追いながら手を動かす。

うざったいヘアピンを外し、ゆっくりと作業を進める。

いいじゃないか、僕はのんびり屋なんだし。


「あ、そろそろ寝る時間だ」


手前の引き出しを開け、箱を取り出す。箱の中の「#006806」を火で炙った瞬間、



僕の意識は飛んだ





手が止まらなくなる。隣に置いてあるライターさえも気にならなくなる。


「…………」


目はいつまでも手元の画面を見つめている。

襟足を掴みながら腕の痺れを耐え抜き、やっと手が止まる。

僕の真面目さの代償は、こんな辛いものなのか。


「ん、終わったし次の作業だな」


後で食べるためのサンドイッチを作る。集中するために注射器で「#294131」を勢いよく打ち込んだ瞬間、



彼の意識は飛んだ




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