第13話 面倒な事になっていた
わたしは夕方もう一度、厩舎に行った。心配していた通り馬の腹に拍車の傷が出来ていた。
このおじいさん馬は素直でやさしい辛抱強い子だから、我慢したんだ。そっと傷に手を当てて魔力を流した。
だめだ、もっと光を抑えなくては・・・・・
傷がなくなった腹を撫でながら心を落ち着ける。首を曲げてわたしを見ているお馬さんに頬ずりすると、わたしは知らんふりしている馬丁さんに笑いかけて厩舎をでた。
彼らはわたしの事を黙っていると思う。馬の利益が一番の人達だもの。
部屋に戻るとまた、お花を使って回復魔法の練習をした。大事なのは光を抑えることだ。
回復はどうかって、最初に、馬の骨折とぐしゃっとなった自分の足首を治したんだから、充分。これ以上はいらない。
折った茎は戻せる。切り取った茎も戻せる。ちぎった葉も戻せる。握りつぶした花も戻せる。
魔力は充分。っとその時侍女さん達が興奮して話しているのが聞こえて来た。
そっと中庭に出て控え室のまえの植え込みに隠れる。立ち聞きならぬ、座り聞き。
「ここのお嬢さんが無様に落馬して、こそこそ馬場を出て行ったんですって」
「わざと大声で脅かしたそうよ」
「たしかに目障りでしょうね」
「よくみるとすごい美人だし、宰相閣下とか部屋に来るし・・・・この前は魔術師団の団長様と遠乗りに行ったでしょ」
「あなた、そういった事、よそで喋ったらダメよ」
「友達にちょっと言っただけよ」
「そう、気をつけてね」
そこによその侍女さんがやって来た。
「聞いたわよ。お嬢様も笑っていい気味とか、言ってた。多分なにかすると思うから気をつけてね」
そこは棒読みか・・・笑いをこらえてるようだし、うちの侍女さんも笑っている。
毒とか盛られたらいやだから、鑑定?自分で回復できるから平気かな!!
「でもなんで急に馬に乗ろうなんて」
「それがね、聖樹の所に行くつもりらしいのよ。それで目立つ所では馬に乗るってことで馬車だと見えないから、いや自分を見せられないでしょ・・・・だから・・・」
「知恵が回るね」
「なりふりかまわずよ」
「でも、密かに内定が出てるって聞いたけど・・・・」
「そうなのよ、内定がでてるらしいけど、うちのお嬢さんは違うのよ」
「そうね、もう片方も違うって言ってる」
「そこでもしかしたら、ここのお嬢さんってことない?」
「うへ・・・・」やめてくれよ
「どうでしょ・・・・そんな素振りはないけど・・・・」
「よく、見張っていて教えてよ。お嬢様が癇癪ばかりで・・・」
「うん、なにかあればね」
あっとあまり長居はできない。わたしはこそこそ部屋に戻った。
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