第11話 ローズ・オリエント

その日、我が家でお茶会が開かれていた。お父様の大事なお客様をお招きしたお茶会と言う事で、わたしも綺麗なドレスを着て、ご挨拶をした。


そしてお客様と一緒に来た子供だけのお茶会も開かれた。わたしは一応ホステスとしてお客様をテーブルに案内していた。


わたしの座るテーブルには綺麗な顔の男の子を集めた。彼らは客として礼儀正しくお茶を褒め、お菓子が美味しいと言ってお茶を一杯飲むと席を立った。


彼らが向かったのはさえない服装の、女の子の所だった。その子はテーブルにひとりポツンとなって泣きそうで、いい気味だった。


わたしの席を立った男の子たちはその子のいるテーブルに座ってその子に話しかけていた。椅子が足りなくなるとわたしのテーブルの椅子を持って行った。


腹が立ったわたしは、そのみすぼらしい女の所に行くと、お花を見に行こうと行うと無理やり立たせた。


すると席の男の子たちが、一緒に行くと立ち上がった。ものすごく腹が立ったわたしは、その子を軽く、ほんの少し押した。

そしたらその子はわざとらしく尻餅をついた。そして泣き出した。


よくみると手の平を少し擦りむいて血が滲んでいた。馬鹿な子たちが大声で


「血がでてるーーー」と騒いで、大人がこちらに向かってた。流石にまずいと思ってその子の手を握って


「血ぐらい止めなさい」と小声で言った。


そしたら、わたしの手の平からぱーーと白い光が出た。


それを見ていた大人が


「それは」とか「それって」とか言い始めた。


子供はみんな言いつけようと


「ローズが・・・・ローズが」「この子が」「この女の子が怪我した」「ローズがした」


大人は


「ローズが光を」「ローズが癒した」「怪我してたの?治ってる」


とかお互いに言い合っていたと思うとお母様が侍女にこう言った。


「ナイフで指を切りなさい」


「えーー奥様」


「なにも切り落とせと言ってるわけじゃないわ。ちょっと切りなさい」


すると執事がなにやら言いつけた。


届けられたナイフを侍女に渡そうとしたが、やめて侍女の手をぐいっと掴むと、ナイフでちょっと指先を突いた。


ぽつっと血が滲んだ。


「ローズ、治してあげて」とお母様が


「やってごらん」とお父様が、まわりの大人がわたしを見ていた。


わたしはさっきみたいに


手の平をむけて


「もう、わかってる!」と思った。光が出た。


しーんとなった。え?とまわりをみたら、お母様がわたしを抱きしめて


「凄いわ、ローズ。なんて立派な光でしょう」


「お嬢様、素晴らしいですわ」「聖女様の誕生ですね」「王子様方とお年もちょうどいい」「それは気が早いのでは?」「そのつもりで動かれた方が」「協力は惜しみません」


お父様はいろいろな事を言うお客様に取り囲まれて、


「はっはっは」「まだ子供ですから」とか言っていた。



翌日、お母様と教会に行く時、あの侍女も一緒だったけど指先に包帯を巻いていた。



神官長の前で指先を切った神官に向けて光を出したわたしを神殿は聖女とした。


わたしは月に一度、神官長がバルコニーで民を祝福する時、その横で神官長を光らせ、最後に民に光を降り注ぐ大事な役目を努めた。



それから一年後、ドロシーが新たに聖女になった。彼女とわたしは同い年。彼女の光はピンクだった。



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