事前カウンセリング
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心身ともに厳しい環境に迫られる研究プログラムに選抜され、他の相手との性行為により子を宿すことになる。
修二や子どもたちとの感情の葛藤と負担を抱えながら、里美にとって運命の年が始まるのだ。
だが、それは何も口にしない修二も同様だった。
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里美にとって負担の大きい一年が始まる。
事前に指定されていた日、職場である建物の別棟へと向かうと、そこには里美と同様に来年度の研究対象者となったのであろう男女が着々と集まっていた。
この場に来るはずである修二の姿を探すが、まだ見つけられずにいた。
「ではこれからSHBプログラム、事前説明会を始めます。お手持ちの資料をご覧ください。既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、このプログラムは世界中で行われている研究の一部となります。この場には民間の方、またこの組織に所属する職員もおりますが、皆様の相手となる方は事前に提出されている検体を元に現在必要とされている組み合わせとなる様組まれています。
この後、面談が行われますので、なるべく皆様のご希望に添える方法で今後の流れを組んでいきたいと
思っていますので、どうぞ宜しくお願い致します。」
普段から度々顔を合わせる所長の挨拶を終えると、里美は後ろから声を掛けられる。
「よっ、お疲れ。」
「修二…遅いわよ。」
姿勢を低くし、一応遠慮がちに入室してきた修二は一番後ろの列に座っていた里美の隣へと座る。
「どこまで話進んでる?」
「まだ全然、所長の挨拶が終わったところ。」
修二のお気楽な雰囲気に、どこか自分が重々しく捉えすぎなのかと疑問を抱きつつ、昨晩改めて家で今後の事について話し合ったばかりだった。
この研究は組織職員も民間人と同様に選別されるが、安全で健康、希望に沿った妊娠出産を行うための研究プログラムであり、その中の項目に含まれる目や髪の色、体格や特性等、様々な生体情報は組織のデータとして管理される。
実際の生殖行為と同様の過程とするため、人工的な方法はとられず、女性の子宮に子どもを宿すためには実際に性行為を必要とする。
そのため、女性にとってこのプログラム対象者となることは、心にも体にも大きな負担を負うのだった。
…
昨晩の出来事。
「明日、先に終わった方が子ども達のお迎えに行くのでいい?」
「そうだな。実際説明会と面談って、どんだけ時間かかるんだ?どのくらいの人数を捌くのかもわからねぇし、夜になるって事もあるよな。」
初回招集の日を翌日に控え、二人は夫婦としての話し合いをしていた。
「私が正式に対象者になって、もし本当に妊娠したら、あの子たちにどうやって説明したらいいのかしら。大きくなっていくお腹を見て過ごして、産まれてもあの子たちの妹や弟じゃないし、一緒に暮らすわけでもないじゃない?」
「そうなの?桃瀬は引き取るつもりないの?」
「え?修二くんはどういうつもりだった?」
「いや…SHBで出来る子は俺の子ではないから、そりゃうちの子として育てたいとかそういう感情は俺にはないけど。桃瀬がそうしたいならそれは良いと思うぞ。あいつらに異母兄弟ができることになるが、実際はどう考えてる?」
「私は…まだ始まってないから何とも言えないけど。今の考えとしては私が実際無事に産んだとしても、育てるつもりはない。」
他の相手と行為をするという事すら受け入れ難い現実、他人との間に出来た子どもを今いる亮二、愛梨、優梨の妹や弟として育てることなど考えられる訳がなかった。
…
手元の資料に目を落とすと、そこには組織職員であっても公開されることのない、初めて見る情報が連なっていた。
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・4月以降、パートナーのいる者の性行為は禁止とし、万が一初回結合日までに妊娠が確認出来た場合は該当者から外れる事する。
・3月までに各人の生体検査を行い、その結果により該当者から外れる場合がある。
・一連の検査、実験は様々な記録として残され、研究員の資料となる。
・出産した子の養育の決定意思は妊娠4ヶ月までに書面に残し、以降の変更は不可とする。
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他にも多数の項目が並び、資料は数センチに渡る分厚い物だった。
修二と里美を含め、ここにいる誰もが自分の相手となるのはどんな人物なのか。
そもそも本当にSHB該当者として進むのか、あわよくば外れることはできないのか。
きっとそんな事を思い、里美もその一人だった。
「桃瀬は精神疾患から回復期にある者としての該当者だろうな。」
「何で…どこ情報?」
「俺がここの組織でどこ所属か知ってるだろ?」
「…なるほどね。もう私よりも色々と知ってるって事なのね。」
自分の妻が研究対象となれば、その相手となる人物がどんな人間なのか気にならないわけが無く、修二は組織職員の特権を使い里美の相手となる人物の様々な情報を既に得ていた。
前方の舞台では一連の話が終了したらしい。
その間に問診票を書き、情報を埋めてゆく。
光の道しるべ《シリーズ小説第二期》 アカリン@とあるカップルの家族誕生小説 @akarinrin123
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