廃墟トンネル
rdrs
廃墟トンネル
とある田舎の山道に、古いトンネルがあった。
それは既に使われていないトンネルで、電灯は点いておらず、出口は塞がっていた。
しかし、そんな場所に訪れる若い男が居た。
彼はこのトンネルで肝試しをして、その動画をネットに投稿して人気を集めようとしていた。
肝試しの内容はこうだ。
深夜2時、スマホだけ持ってトンネルに入る。
そして、トンネルの出口を塞ぐ壁に触ってから、元の場所へ戻れば成功というもの。
それから深夜2時になった。
男は予定通り、トンネルに入ろうと入り口の前に立った。
すると、トンネルの奥の暗闇から「ぐご~…ぐご~…」という低い音が聞こえてきた。
男は少し足が震えていたが、それでもトンネルの奥に向かって進むことを決意した。
男はしばらく歩き続けた。
前に進めば進むほど、「ぐご~…ぐご~…」という音がだんだんと大きくなっている気がした。
体の震えが止まらない。早く引き返したい。
だが、それでも男は進み続けた。
暗闇に閉ざされた一本道を、スマホのライトの光を頼りに。
それから、どれ程歩いたのだろう。
トンネルの奥にある閉ざされた出口が見えて来た時、男は歩く足を止めた。
出口を塞ぐ壁、その近くに人が倒れていたのだ。
男は「まさか」と思ったが、遠くからでは暗くてよく見えない。
何かの見間違いだと自分に言い聞かせ、恐る恐るその人影に近寄る。
「ぐご~…ぐご~…」という音もすぐそこまで来ているが、男は進む。
ライトに照らされ、だんだんハッキリと見えて来たそれは、人の肌のような色をしていた。
それが目の前に来るまで近寄り、ライトでその全体を照らすと…
それは中肉中背の中年男性だった。
そして、その中年は「ぐご~…ぐご~…」といびきをかきながら、地べたで寝ていたのである。
何がなんだかわからなかった。なぜこんなところで人が寝ているんだ?
だが、放っておくのもよくない。もしかすると、同じように肝試しに来て、そのまま帰れなくなった人なのかもしれない。
そう考えた男は、目の前で寝ている中年に「大丈夫ですか?」と、恐る恐る声をかけた。
すると、中年は「はい」と言って起き上がり、きょとんとした顔でこちらを見つめてきた。
そのまましばらく沈黙が続くと、中年はその場で再び寝てしまったのである。
まるで意味がわからなかった男は、もう一度「大丈夫ですか?」と声をかけた。
すると、中年は先ほどと同じように「はい」と言って起き上がり、きょとんとした顔でこちらを見つめ、再び寝てしまった。
「何かがおかしい。」
そう思った男は、中年に何度も声をかけた。
しかし、中年は何度も同じ行動を取るだけであった。
「はい」と言って起き上がり、
「きょとん」とした顔でこちらを見て、
そのまま「寝る」のだ。
「はい」、「きょとん」、「寝る」…。
廃墟トンネル rdrs @ole-ole-Orange
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