夏の生命
山川陽実子
第1話
夏嵐若き田んぼは波打てり
向日葵やこのまま死ねたら楽なのに
カブトムシ取りて崩壊ゲシュタルト
「まだ温い」かはたれ時に慈雨上がる
梅仕事ふたとせ前の氷砂糖
あとはもう死ぬだけだから歩く夏至
かき氷溶けゆく早さ老いが来る
海開き誰の赦しも得ておらず
精のつく物食へと言ふ斜向かひ
夏草を刈るためだけだレゾンデートル
累々と蚯蚓炎暑のアスファルト
薔薇を買う生きていくには要らないが
盂蘭盆会行きも帰りもきゅうりたれ
アゲハ蝶お前は滅びなくてよい
駅前に猛暑日は増えヒトは減り
「楽しみ」と見上げる坊や栗の花
ガーベラや手足もがれて微笑んで
少年よひなげしの首折りて来よ
蟻の群れ赦さない過去赦す罪
仰向きのうつくしき虫夏終わる
夏の生命 山川陽実子 @kamesanpo
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