第12話 side白雪鞠

私は、自分のタブレットの表示に目を落とした。





マリ「......」




アンズ「もう...また暗い顔してる。」




マリ「うそ、ごめんね。」




アンズ「ううん、大丈夫。でもさ...」




マリ「うん?」




アンズ「私じゃ、頼りないかな…」




マリ「...そんなことないよ!杏珠ちゃんがいっつも一緒にいてくれるから、私だって生きてたいって思えるんだから!」




アンズ「...そっか!えへへ、うん、こちらこそありがとうね。」





それでも私は、杏珠ちゃんに話ができなかった。




杏珠ちゃんからは、何度も彼女のジョーカーを使って私の密告を済ませてあげる、と説得をされたけど......




私には、断ることしかできなかった。




私なんかより、他の人に使ってあげて。




杏珠ちゃんを悲しませたいわけじゃない。




わかって欲しい。









東雲さんと桐江さんの2人は、ご飯を食べ終えて部屋に行った。




私たちはまだ、ロビーに残って話をしていた。





アンズ「それにしてもあのふたり、なに話してるんだろうね?」




マリ「きっと難しい話だよ。私たちには分かりっこない。」




アンズ「......」




マリ「杏珠ちゃん?」




アンズ「ねぇ、鞠ちゃん。」




マリ「どうしたの?」




アンズ「なんで話してくれないの?」




マリ「え...?」




アンズ「私分かるよ。ずっと一緒にいるんだから。鞠ちゃんが何かに悩んでること、それを私に隠してること。」




マリ「......もう、」




アンズ「...」




マリ「ごめんね、杏珠ちゃん。」




アンズ「...謝らないで。」




マリ「...いつもありがとう。」




アンズ「うん。」




アンズ「...やっぱり、話してくれないのかな。」




マリ「......」




アンズ「だったら、せめて。」





杏珠ちゃんが、私を抱きしめた。





マリ「え...?」




アンズ「だったらせめて、抱きしめさせて。...私には、これくらいしかできないけど...」




マリ「...」




私は、彼女のまだ頼りない肩で涙を堪えた。




アンズ「...泣いても、いいよ。」




...話しても、いいのかもしれない。




私はもう、深く考えることなんてできなかった。






マリ「...杏珠ちゃん、私...」





???「...あー、お取り込み中だった?」




私たちは、慌てて体を解いた。






猪狩さんが、そこに立っていた...




アンズ「飯伏さんは...?」




ツムギ「あー、蘭丸?あいつはちょっと束縛が酷くてさ〜。今は羽伸ばし中ってワケよ!」




目が笑っていない。




猪狩さんが、私たちに近づいてきた。


反射的に、後ろに下がった。





ツムギ「あれ、なんでそんなに怖がってんの?」




マリ「......」




ツムギ「...まぁいいや。ならさっさと済ますだけだよ。」




アンズ「...え...」





猪狩さんは、杏珠ちゃんに近づいた。




杏珠ちゃんは、怯えて座り込んでしまった...




私も、足が竦んで何もできなかった...





猪狩さんがさらに近づく。







猪狩さんが、杏珠ちゃんに襲いかかった。





首に手をかけた。





アンズ「...ぐっ....ぁ...」




マリ「杏珠ちゃん!!!」





私は、杏珠ちゃんのもとへ駆けよりたかったが...




腰が抜けてしまって、思うように動けない。





猪狩さんは、なおも強く首を絞める…





ツムギ「分かるか!?ウチらのカードの能力はもう全部消えた!!誰のカードの内訳も分かんないんだったら、こうやって殺してくしかないだろ!なぁ分かってくれよ!!あはははは!!!」




アンズ「あ.....ぅ.....」




ツムギ「それとも、時間切れで全滅したいか!?」




マリ「猪狩さん...!やめて、杏珠ちゃんが...!」




ツムギ「それに白雪お前、まだ密告残ってるんだろ?いいから早くこいつにやっちまえよ!なぁ?」




マリ「だったら...せめて私を殺してください...」




アンズ「マリ...ちゃ......だ...」




ツムギ「うっっるせぇなぁ!こいつ殺したらすぐ遊んでやるよ!殺しやすそーな小さいのから手をかけた!アタシ何か間違ってるか!?」





???「うん、間違ってるね♪」




ツムギ「...!!!」




ランマル「あはは、久しぶり♪」




ツムギ「ランマル、てめぇ、何のつもりだ...!」




ランマル「わーこわーい!まるで獣だね♪」




ツムギ「.........」





<ジョーカーの能力が発動されました。>





ランマル「その手、解きなよ。」




ツムギ「っははは!何言ってやがんだ!こーやって殺してけば、情報がなくなった今でも十分ウチらで生き残れんだよ!そんなことも分かんねぇのか??見損なったぞ蘭丸!?」




ランマル「はぁ、ごちゃごちゃうるっさいな。」









<飯伏 蘭丸が、猪狩 紬希を密告しました。>









ツムギ「...は...?」





ツムギ「...ぐっ......」




ランマル「どう?毒針ぶっ刺された気分♪」




ツムギ「いっ......ぁ...」




ランマル「うんうん、会話どころじゃないみたいだね♪」





私は、気がついたように鞠ちゃんに駆け寄った。




......少しだけど、息はある...






ツムギ「く...そ.....蘭丸......」




ランマル「あ、まだ生きてたんだ♪」




ツムギ「なん...で......」




ランマル「はぁ、分からなかったの?」




ツムギ「......」




ランマル「会議室前で是本さんを待ってる時、僕が言ったこと、覚えてる?」





ランマル『ボクは裏切るよ』





ツムギ「......まさ...か......」




ランマル「キミだよ、猪狩さん。」




ツムギ「最初から...アタシ...を...」




ランマル「優秀なスクラップだったよ。」




ツムギ「.........」




ランマル「さよなら、猪狩さん。」




ツムギ「やっぱ...お前......サイテーだ...」




ランマル「......」




ツムギ「............」




ランマル「...あーあ、死んじゃったね。」




ランマル「最低で結構。...それよりさ、白雪さん。」




マリ「え、は...あ、えっと...ありがとう、ございました...?」




ランマル「うん?ボクは何もしてないよ〜♪」




ランマル「それよりさ、この子、運んであげなよ。息があるとはいえさ、休ませてあげないと心配だな〜?」




マリ「...あなたにも、そんな感情があったんですね。」




ランマル「......はは、まさか。」




ランマル「って、そんなことはいい。早く休ませてあげな〜♪」




マリ「...はい、それではまた...。」






白雪は、早坂を背負って部屋へ戻っていった。







ランマル「...はぁ、ねえ、紬希さん。」







【所持手札: 3,4,J】


【NG行動 : 生存意欲を失う】







ランマル「...すごい曖昧なNG行動だね♪」















[生存者、4名。]

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ノエルの館 @kukushio221

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