明治書院『新釈漢和辞典』

実況「今回は、明治書院の『新釈漢和辞典』ですね」


解説「この『新釈漢和』はハンディ分類なんですが、B6変形サイズで他の辞書に比べると一回り小さいサイズです」


実況「ポケットサイズとは違うんですか?」


解説「ポケットはA6サイズですね。ポケットよりは大きく、他のハンディよりは小さいというのが『新釈漢和』です」


実況「A6とかB6と言われても、よく分かんないんですよね」


解説「例えば、ポケットサイズの『明解漢和辞典』は縦が約15センチ。ハンディサイズの場合は縦が約18センチです。その間の『新釈漢和辞典』は縦が16.8センチですよ」


実況「へー。ちょうど間ぐらいなのにB6変形版のハンディサイズくくりなんですね」


解説「出版社の明治書院の公式見解に従いました」


実況「ところで気になっていたんですが、辞書の表紙に描かれている取っ手のついたペンギンみたいなこれはなんなんですか?」

(※どんな絵かはメルカリで『新釈漢和辞典』で検索していただくと出てくると思います。そう、その、金色のフライトキャップ被ったペンギンにハンドルつけたみたいな、それ)


解説「なんなんでしょうね……古代中国の鳥型青銅器かなんかですかね」


実況「独特ですごく気になる」


解説「このペンギンは『新釈漢和辞典』が新修版だったころからのレギュラー・キャラクターのようです。新修版の箱と表紙にちゃっかりいます」


実況「へー。新修版とは?」


解説「『新釈漢和辞典』の初版が出たのが1969年です。その6年後の1975年に最初の改訂があって、出たのが新修版です」


実況「なるほど、改訂版のことですね」


解説「そして9年後の1984年に今回エントリーしている新訂版が発行されました」


実況「ちょうど40年前の辞書なんですか。なかなかの古さですね。で、その後は?」


解説「その後は改訂されていません。『新釈漢和辞典』新訂版は現在も明治書院公式サイトのラインナップに並んでいますが、残念ながら品切れ重版未定です」


実況「ということは、入手困難ですね」


解説「ええ、まあ、でも、古本ではかなりの数が出回っています。さすが漢和辞典最盛期の頃の漢和辞典ですねえ」


実況「というわけで、ほしい方はぜひ古本でお探しください」


解説「この『新釈漢和辞典』新訂版は、本サイズが小さいこともあって親字数は約6,600字とかなり少なめです」


実況「エントリー辞書の中で比べると、小学生向けの『例解小学漢字辞典』3,000文字、常用漢字や人名漢字を対象にした『常用字解』『人名字解』に次ぐ少なさですよね」


解説「ところが、他の親字数7,000文字8,000文字の辞書よりも某ナメク字レースでは健闘するという謎辞書でした」


実況「親字として選んでいる漢字がちょっと違うんでしょうか」


解説「そうですねえ。正確には分かりませんが、『新釈漢和辞典』の前書きによると、辞書を使いやすくするために難読漢字の異体字は減らしたそうです。一見親字は少なく見えますが、正字は多いのかもしれません」


実況「上手に漢字を選んでるんですね、きっと」


解説「さらにこの『新釈漢和辞典』には地味に嬉しい特徴があります」


実況「お、なんですか?」


解説「一般的な漢和辞典の熟語は五十音順に並んでいます」


実況「そうですね、親字を引いてから熟語を読みで引くんですよね」


解説「『新釈漢和辞典』は、熟語が二文字目の漢字の総画数順に並んでいます」


実況「へ-。え、それのどこが地味に嬉しいんですか?」


解説「熟語の読みが正確に分からなくても見つけることができます。熟語の読みって、特に日本特有の漢語は変わった読みも多いので、これは地味に嬉しい」


実況「なるほど。特に初学者には嬉しいですね。かなり地味ですが」


解説「地味に嬉しい、大事です。漢和辞典の“派手に嬉しい”特徴は、だいたい使ってみるとロクに嬉しくありません。だから地味に嬉しいが大事です」


実況「派手に嬉しいってなんですか、それ」


解説「二色刷りとか筆順とか、引きやすい工夫が満載! とかですね」


実況「あー。」


解説「あとオールドスタイルの漢和辞典では普通のことなんですが、『新釈漢和辞典』にインデックスはついてませんし、欄外ガイドも必要最低限です」


実況「シンプルで、引きやすくも引きづらくもないやつですね」


解説「他の特徴としては、本文中には語法や故事成語などのコラムは一切挟んでこないです。語法は巻末の付録に助字解説がありますので、そちらをご覧ください」


実況「わあ。質実剛健」


解説「でも、部首では従来の部首にこだわらず、新部首を立てたり、ガイドになる空部首を立てたりして、とても柔軟ですよ」


実況「では質実柔軟ですね」


解説「まあ現状では、他の辞書に比べてここがおすすめポイントとか、こういう人におすすめってのはないんですが、とてもいい漢和辞典なので、もし手元にあるならぜひメルカリに出さずに使っていただきたいですね」


実況「メルカリで漢和辞典を買ってる人に言われてもなー」


解説「ところで『新釈漢和辞典』には「引き方がよくわかるテスト形式マニュアル」と「力試しテストハガキ」がついていて、送ると「認定書・記念品贈呈!」ってサイトに書いてるんですけど、これってまだ有効なんですかね? 記念品もらえるんですかね?」


実況「さ、さあ? たかぱしさんの『新釈漢和』のハガキを送ってみればいいんじゃないですか?」


解説「古本だったからか、刷数の関係か、ついてなかったんですよね、ハガキ」


実況「一体どんな記念品がもらえたんでしょうね」


解説「どなたか記念品をもらったことのある方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください!」



☆『新釈漢和辞典』

漢字充実度★★☆☆☆

解説充実度★★★☆☆

読みやすさ★★☆☆☆

初心者おすすめ度★★★☆☆

玄人おすすめ度★★★☆☆

引きやすさ★★☆☆☆

お値段★★★★★

トータル20点

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る