各辞書のあれこれレビュー

『角川 新字源』

実況「まず最初は角川というのは、やはりカクヨムへの忖度ですよね?」


解説「違います! たかぱしが最初に持った漢和辞典が『新字源』だったから、ただそれだけです。忖度違います!」


実況「じゃあまあそういうことにしておきます」


解説「『新字源』は昭和43年、つまり1968年に出版された漢和辞典です」


実況「55年以上も前なんですね」


解説「便宜的にそれを初版と呼びます。そして1994年に改訂版、2017年に改訂新版と改訂新版特装版がでています」


実況「なるほど、ということは、『新字源』を4冊持っているというたかぱしさんは、全種コンプリートしているわけですね!」


解説「いえ、違います」


実況「え、違う? ということは?」


解説「初版と改訂版と改訂版と改訂新版特装版を持ってますね」


実況「……改訂版が2冊ある……? え、その改訂版はなにか違うやつなんですか?」


解説「いえ、同じですね」


実況「なんでやねん!! おんなじ辞書持ってどうすんねん!!」


解説「ふふふ、大丈夫です。2冊同じ辞書だなんて些細な問題です」


実況「はあ?」


解説「実は初版と改訂版は中身一緒なので。ぶっちゃけ、3冊まるかぶりなんです。もはや2冊が同じ辞書だなんて些細な問題です」


実況「なんじゃそりゃあ! え、初版と改訂版の中身が一緒って、それどういうことですか?」


解説「1994年の改訂では本文は改訂されなかったんですね」


実況「じゃあ、なにが改訂されたんですか? 値段とか?」


解説「いえ、値段は初版の頃からちょくちょく改定されていたので違います。1994年の改訂では、付録が大きく改訂されたんです」


実況「付録……の改訂……」


解説「もちろん本文も修正された部分はあるんだと思いますが。今のところ見つけられていません」


実況「なんてこったい」


解説「しかし、考えてみてください。1968年に出版された漢和辞典がほぼ形を変えることなく2017年まで売れ続けていたわけです。これは、逆にすごい」


実況「逆にすごい(笑)」


解説「漢和辞典界でロングセラーといえば小学館の『新選漢和辞典』で、1963年に出版され現在に至るまで60年以上売れていますが、その間改訂は8回、現在第八版になっています」


実況「60年で改訂が8回……多いのか少ないのか分からないですね」


解説「学研の『漢字源』は初版が1988年なので約36年の歴史ですが、最新版が第六版でこちらも改訂を6回重ねていますね」


実況「なるほど。確かに逆にすごい気がしてきた」


解説「そして待望の大改訂により生まれたのが2017年の改訂新版です」


実況「今度は紛れもない全面改定だったんですね」


解説「これは10年をかけた大プロジェクトでして、角川は『新字源』改訂新版の特設ページを作るわ動画作るわ対談記事出すわ特集記事連載するわ、もはやお祭り騒ぎでした」


実況「それは……よほどの大事業だったことがうかがえますねえ」


解説「これらは今でも角川のサイトで簡単に見られますので是非ご覧ください。四天王の本気が見られます」


実況「そういえばハンディ漢和四天王でしたね、角川」


解説「そんな『新字源』ですが、その最大の特徴は漢字の表意文字機能を重視した配列をして、なりたち・原義から派生順に意味を解説しているところですね」


実況「アワードでも旧字体の部首で出てくるところに注目しました」


解説「漢字の形や意味に注目して調べたい人におすすめです」


実況「ややマニアックという評価でしたが」


解説「やはり引きやすさを第一に考えた部首配列とは違いますし、原義から説明する字義解説も使いづらいときがあるかと思います。でも、熟語や用例も揃っていますし、大学生さんにもおすすめですね」


実況「ネックは文字が小さめなことですね」


解説「そうですねえ。あと、ちょっとデザインが引きづらいんですよねえ」


実況「どうして引きづらいんでしょうか?」


解説「おそらく直接部首引きできるように部首画数インデックスをつけてくれていて、なおかつ外柱に部首インデックス(前後10個程度の部首一覧)が書いてあるんですけど、肝心のページ部首、部首内画数、掲載漢字一覧がよりにもよって上部ののど(内側)寄りにいるんですよ。これが見づらくて、直接部首引きがとてもしにくいです」


実況「部首索引を使えば引きづらいことはないわけですね?」


解説「まあそうですね。部首の冒頭に部首内漢字一覧もしっかりありますし。でも、あとちょっとデザインを変えてくれれば、ものすごく引きやすくなるのになぁ、ともやもやします」


実況「惜しいですねえ。ぜひ次の改訂のときに改善されることを願います」


解説「でも不変の角川ですから。次の改訂はまた20年後とかかもしれません」


実況「20年後かあ」


解説「まあ、そんな改訂の必要がないほど信頼と実績に満ちた漢和辞典『新字源』を人生のお供に是非どうぞ」



株式会社KADOKAWA『角川 新字源』

漢字充実度★★★★☆

解説充実度★★★★☆

読みやすさ★★★☆☆

初心者おすすめ度★★★☆☆

玄人おすすめ度★★★★★

引きやすさ★★☆☆☆

お値段★★★☆☆

トータル24点


【↑たかぱしの主観により評価しています】

漢字充実度:親字・熟語・ナメク字が多いものほど評価が高い

解説充実度:解説が丁寧・豊富なものほど評価が高い

読みやすさ:紙面デザイン・文字サイズ・簡潔さにより読みやすいものほど評価が高い

初心者おすすめ度:初心者でも使いやすい工夫の多いものほど評価が高い

玄人おすすめ度:専門知識や漢字オタクを満足させる情報が多いほど評価が高い

引きやすさ:たかぱしが引きやすい!と感じるもの

お値段:当時の販売価格でとにかく安ければ高い

トータル:★ひとつにつき1点

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