漢字基本情報:だいたい書いてある項目は同じですね
実況「とうとう年を越してしまった皆さまこんにちは。漢和辞典アワード実況のかげると」
解説「解説はたかぱしです」
実況「たかぱしさん、なんか、ついてますよ」
解説「ついてますねえ」
実況「なにがとは申しませんが、姑息につけてきましたね」
解説「無駄な足掻きと言えるでしょう」
実況「斯くなる上は、早いとここの漢和辞典アワードを完結しましょう!」
解説「はい、今年の最大目標です」
実況「今月の目標ぐらいにしておいてください。さっそくですが、今日はどんなところへ注目するんでしょうか」
解説「今回から各漢和辞典が漢字に関するどんな情報をどれほど載せているのか、に注目して比較していきたいと思います」
実況「おおお。たぶん、みんなが最初に想定していたであろうアワードっぽい内容! そう、そういうのが聞きたかったんですよ」
解説「え、そうなんですか?」
実況「そうですよ。もう部首がどうとか部首がどうとか部首がどうとか読みがどうとか、まさかそんな内容だと思ってなかったですよ」
解説「大丈夫です」
実況「……なにが?」
解説「どうせ今回もみなが思ってるような内容にはなりません」
実況「“安心”“安定”の漢和辞典アワードですね。それで、一般的な漢和辞典にはどんなことが書かれているんでしょうか?」
解説「大まかに分けて、4つあります」
実況「大まかに、ですか。どんな4つですか?」
解説「基本情報・字音・意味・なりたち・熟語です」
実況「5つありますね」
解説「熟語はこの間フライングしてしまったので、今回から見ていくのは4つです」
実況「あれフライングだったんですね。熟語数を比べてたので、なんで親字数のすぐあとに出さなかったのかなって思ってました」
解説「……ふ、フライングです。というわけで、今回は漢字の基本情報について解説していきたいと思います」
実況「それで、基本情報にはどんなものが含まれるんでしょうか」
解説「正字・異体字の字形、部首、画数、漢字の種類などの基本的な情報ですね」
実況「確かに基本的ですね。漢字の種類というのは?」
解説「教育漢字、常用漢字、人名漢字、それ以外の漢字の種別です。さらに教育漢字の場合は習う学年についても載っています」
実況「教育漢字というのは小学生で習うように文科省が定めている漢字ですね」
解説「はい。各漢和辞典を比べると、上の項目はだいたい載っています。まあ、大きな違いはないと言えるでしょう」
実況「違わないんかい」
解説「ちゃんと違うところもありますよ。辞書によってビミョーな違いの出る基本情報、それは『筆順』と『文字コード』情報です」
実況「筆順というのは、書き順のことですよね」
解説「そうです。昔の漢和辞典にはあまり書き順は載っていなかったんですが、近年は多くの辞書が載せています」
実況「その筆順には、どんな違いがあるんでしょうか? 辞書によって筆順が違う!とかですか?」
解説「いや……それは……ちゃんと比べたことないけど……たぶん一緒かと……まあ違ってもどうでもいいところですね」
実況「どうでもいい……」
解説「書き順は1957年に文部省が出した指導手引きをもとに決められているんですが、でもあくまで原則であり、正誤ではありません」
実況「あー。ぬるぬる不定形ですもんね。じゃあ、なにが違うんですか?」
解説「各漢和辞典での違いは、どれほど多くの漢字に筆順を載せるか、ですね」
実況「おー、まさに量の違いなんですね」
解説「ちなみに、ハンディ漢和辞典で掲載漢字全てに書き順を載せているものは非常に稀れです」
実況「え、そうなんですか?」
解説「はい。だいたいは常用漢字だけ、多い辞書で常用漢字と人名漢字だけですね」
実況「ということは、常用漢字と人名漢字あわせて約……」
解説「だいたい3,000字ですね」
実況「じゃあ、親字数が10,000字だの14,000字だの言ってるのに、筆順がついている漢字は三分の一以下なんですか?」
解説「そういうことになりますね」
実況「残りの漢字の筆順を調べたい人はどうしたらいいんですか!? ひどい手抜きじゃないですか!」
解説「そうですねえ。というか、常用漢字でも人名漢字でもない漢字の書き順を知りたい人って…………誰ですか?」
実況「え。それは。まあ。きれいな字を書きたい人とか?」
解説「確かに、きれいな字を早く書くために定められたのが文科省推奨書き順です」
実況「ほら、必要ですよ」
解説「でも今どき手書きする人なんて……いないじゃん」
実況「それは……そうですけど」
解説「たとえば、書道をしている方にとっては、字体と書き順というのはとてもとても大事な要素です」
実況「書道では常用漢字以外の漢字も書くわけですし、筆順を知りたい人がいるのでは?」
解説「なので、書道専用の字体・筆順字典がたくさん出版されています。漢和辞典ではなく、ぜひそちらをご覧ください」
実況「あ、別にあるんですね」
解説「そう、漢和辞典についている筆順というのは、別に筆順を知りたい人がいると思って載せているわけではなく、『筆順が載ってる』『学習に使えそう』という錯覚を生むために載っているんです!」
実況「そんなばなな」
解説「というわけで、筆順が多い漢和辞典を選びたい人におすすめなのがこちらです」
実況「文脈無視か」
教育漢字・常用漢字・人名漢字に筆順あり
☆『漢字源 改定第六版』
☆『新漢語林 第二版』
☆『大修館 現代漢和辞典』
解説「この三冊なら約3,000文字の書き順を確認できます」
実況「ええと……書き順にこだわりたい方におすすめですね」
解説「特に『大修館 現代漢和辞典』には「筆順の原則」が載っていて、文科省推奨書き順のルールを知ることができます」
実況「『学習に使えそう!』というか、使えますね。錯覚じゃないです」
解説「逆に筆順は不要!という方もいると思います。書き順がマスで解説されてるの、結構邪魔ですし」
実況「邪魔とか言わない!!」
解説「そういう方は比較的古い漢和辞典を選べばいいわけですが」
実況「えー。新しいのがほしいです」
解説「その場合のおすすめがこちらです」
筆順はなし!!
☆『角川 新字源 改訂新版』
実況「あ、一冊だけなんですね」
解説「エントリー辞書のなかで現役かつ筆順を載せていないものは『新字源』だけでした」
実況「ほんとうに近年は筆順を載せるのがスタンダードなんですね」
解説「少しでも情報量を増やして漢和辞典の有用性をアピールしようという努力です」
実況「書き順も大事な漢字の情報です!」
解説「以上が漢和辞典における筆順の違いですが……ここで終わったら極めて普通ですよね」
実況「え。普通でいいですよ」
解説「これだけでは、漢和辞典アワード調査班があくびしながら解散してしまいます」
実況「あくびしてないで、さっさと次の調査と準備を進めたらいいんじゃないでしょうか」
解説「そんな我々は、気になる漢和辞典を見つけました!」
実況「あれですね、上司に命じられた仕事はなかなか片付けないのに、勝手に見つけてきた仕事で忙しいって文句いう厄介な部下ですね。で、その漢和辞典とは?」
解説「小学館『現代漢語例解辞典』です」
実況「なにが気になったんですか?」
解説「『現代漢語例解』は筆順を教育漢字、常用漢字、そして一部の人名漢字に載せています」
実況「一部の? というのは?」
解説「筆順が難しくて間違えやすい人名漢字を選んで載せた、とのことです」
実況「なるほど」
解説「気になりますよね。筆順を間違えやすい漢字とは? 筆順の載っている人名漢字はいくつなのか? 多いのか? 少ないのか?」
実況「まあ、気になるといえば、気になりますね」
解説「というわけで調べました。『現代漢語例解辞典』の人名漢字285字のうち筆順が載っている難しい漢字はどれだ!?」
実況「はあ。一応聞きますが、どうやって?」
解説「285字全部開いて確かめました。めんどくさかったです」
実況「だったらやらなきゃいいのに!! で、どうだったんですか?」
解説「人名漢字285字中書き順がついていた漢字は――」
実況「三分の一なら100字ぐらいはありそうですが」
解説「じゃじゃじゃじゃん! 285字中10文字です」
実況「あ、少ない……」
解説「予想以上に少なくて、『教育漢字・常用漢字・人名漢字に筆順あり』の辞書に含められないなってなりました」
実況「そうですね」
解説「ちなみに『現代漢語例解』が選ぶ筆順の難しい人名漢字はこちらです」
『乃』『丑』『旭』『虎』『毬』『爽』『皐』『煕』『爾』『慧』
実況「まあ確かに、『乃』とかどっちから書くのが正解か、迷いますね……で、どっちなんですか?」
解説「知りません。書けてればおっけーです」
実況「ほんとに筆順に興味ないな、この人」
解説「というわけで、『乃』の筆順が気になる方はググるとすぐ動画で筆順を見られるサイトが出てきますので、ぜひそちらでご確認ください」
実況「そこは漢和辞典すすめましょうよ」
【参考データ】書き順が……
教育漢字・常用漢字・人名漢字あり
☆『漢字源 改定第六版』
☆『新漢語林 第二版』
☆『大修館 現代漢和辞典』筆順の原則つき
☆『現代漢語例解辞典 第二版』(人名漢字は一部)
教育漢字・常用漢字あり
☆『全訳 漢辞海 第三版』
☆『例解 新漢和辞典 第三版』
☆『新明解 現代漢和辞典』
☆『三省堂 五十音引き漢和辞典 第二版』
☆『例解小学漢字辞典 第三版』
☆『旺文社 漢字典 第二版』
教育漢字あり
☆『新明解 漢和辞典 第四版』
☆『五十音引き 講談社漢和辞典』
なし
☆『角川 新字源 改訂新版』
☆『新釈漢和辞典 新訂版』
☆『岩波 新漢語辞典』
☆『新漢和辞典』
☆『常用字解』
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