カテゴリ:姉さん、事件です(やらかしました)

実況「タイトルが不穏……漢和辞典アワード実況のかげると」


解説「解説はたかぱしです」


実況「一体誰がなにをやらかしたんでしょうか、たかぱしさん」


解説「これはですね、アワード運営本体がノートパソコンに水筒のお湯をぶちまけた例の事件のことですね」


実況「あ、あー。やらかしましたね」


解説「はい、やらかしました」


実況「パソコンはどうなったんでしょうか」


解説「鋭意乾燥中で、生死不明です」


実況「そうですか……」


解説「少なくとも二三日はこのままですが、その後果たして起動するのかどうか、さっぱり分かりませんね」


実況「お気の毒に。でも、漢和辞典アワードわれわれとなにも関係ないですよね。タイトルにしなくても。あとネタがものすごく古い」


解説「それが、漢和辞典アワードの分析データはパソコンのなかでして」


実況「いまどきクラウドに保存しとけよ!!」


解説「あと、漢字のあれこれを打つのが、やはりパソコンでないと時間がかかりまして」


実況「現在アワード会場はスマホよりお送りしております」


解説「調べたり参照したりコピペしたりUnicode打ちしたりするのは、スマホだと面倒もとい面倒です」


実況「言い直せてない。ただただ面倒なんですね」


解説「不可能ではない。が、面倒です」


実況「やらかしましたね」


解説「やらかしました」


実況「ということは、漢和辞典アワードはあえなく終了ということでしょうか」


解説「え? いえ、まさか」


実況「ではお休み?」


解説「は? いえ、まさか」


実況「…………」


解説「…………」


実況「え、じゃあ、なんですか?」


解説「? ただやらかしたっていう愚痴ですね」


実況「…………」


解説「…………」


実況「無駄に無駄な無駄を浪費するな!」


解説「というわけで、本日はぽちぽち無難な内容でお送りします」


実況「大変申し訳ございません。で、どんな内容のはなしなんでしょうか、たかぱしさん」


解説「今日はハンディ漢和辞典を分類する“カテゴリ”について見ていきたいと思います」


実況「カテゴリですか。そんなものがあるんですか?」


解説「(たぶん)(思うに)あるんです」


実況「不確実な匂いがぷんぷんします」


解説「おさらいではありますが、ハンディ漢和辞典とはだいたいB6判サイズで8,000~14,000字が載っている、普遍的な辞書です」


実況「一番身近な漢和辞典ですね。漢和辞典が身近かどうかという問題を棚上げすれば」


解説「いろいろな出版社からいろいろな漢和辞典がたくさん出ていますが、実は想定する使用者の違いで分かれていまして。それが“カテゴリ”です」


実況「へえ、そうなんですね。使用者の違いで。……それって……もっと早くするべきはなしだったのでは?」


解説「いえ、まあ、そう思うかもしれませんが、それがそうでもなく、だから『今でしょ』的なアレです」


実況「言い訳するなら、もう少しまともな言い訳してください」


解説「この“カテゴリ”というやつ、特にはっきり分類されているわけではなく、業界的にうっすらなんとなくあるようないような、でもある。というやつなので重要度低いです」


実況「あるのかないのか、はっきりしてください」


解説「ある。もっさりある。でもあったからなに?感もある」


実況「まあ、これ以上追及してもぐだる予感なので、さっそく解説をお願いします」


解説「おおよそハンディ漢和辞典は5種類に分けられます」


実況「5種。思ったより多いですね」


解説「すなわち『上級』『標準』『初級』『変種』『小学生向け』です」


実況「最後だけ2文字で揃えられなかった感がすごい」


解説「それぞれの違いは簡単です」


実況「ふむふむ」


解説「『上級』はガチな出版社がガチで作っている、漢籍や史料を読む専門家の使用にも耐える内容の漢和辞典です」


実況「さすが上級ですね」


解説「親字数が多いという特徴のほかに、漢辞海のような“漢和辞典”じゃない変な名前がつけられているというのがあります」


実況「変なって。でもそれ、四大漢和辞典のことですよね。あの四つが上級ということですか?」


解説「四大漢和辞典、角川『新字源』、学研『漢字源』、三省堂『漢辞海』、大修館『漢語林』ですね。あと旺文社『漢字典』も上級です」


実況「あ、『漢字典』も上級なんですか。え、でも、なら、最初から“五大”漢和辞典として紹介してくれればよかったんでは?」


解説「いえいえ。上級と四大漢和辞典とではちょっと定義が違うので。一緒くたにしないでください。でも、その辺りを説明すると長くなるので、今回はそういうもんかと流してください」


実況「ええー」


解説「続いて『標準』。こちらは主に高校生から一般読者を対象としていて、日本の日常でよく使う漢字や授業の漢文に必要な漢字を中心に掲載しています」


実況「上級よりは掲載漢字が少ないんでしょうか?」


解説「だいたいそうですね。その特徴のほかに、ド直球の『漢和辞典』というタイトルであることが多いです。なぜか」


実況「漢和辞典のタイトルって、地味に重要……?」


解説「みっつめの『初級』ですが、こちらは対象使用者を中学生以上とする漢和辞典です」


実況「中学生が対象に入ると、なにか変わるんでしょうか?」


解説「気持ち変な漢字が載ってません」


実況「気持ち……変な漢字……」


解説「だいたいタイトルは『漢和辞典』に+αでなんかくっつけてあります。三省堂の『例解漢和辞典』、学研の『現代標準漢和辞典』、旺文社の『標準漢和辞典』とかですね」


実況「マジでタイトルの付け方で見分けられるんですか……」


解説「だいたいですけどね。そして『変種』というのは、マニアックな要望に応えるマニアックな漢和辞典です」


実況「マニアックとは。どんなのがあるんでしょうか?」


解説「五十音順や常用漢字特化とか。まあ、だいたい三省堂のやらかし用枠です」


実況「言い方!! まあでも、なんとなく分かりました」


解説「ちなみに、タイトルはそのまま内容を表すタイトルです」


実況「『五十音引き漢和辞典』とか『常用漢字辞典』とかですね」


解説「最後に『小学生向け』ですね。まあ文字通り小学生向けの漢和辞典のことなんですが」


実況「ですが?」


解説「この“小学生向け漢和辞典”というのは、ハンディ漢和辞典の中でも特化枠。完全別物として見る必要があります」


実況「え、そうなんですか?」


解説「そうなんですよ。小学生向け漢和辞典には、今まで見てきた漢和辞典とは違った漢和辞典世界が広がっています」


実況「え、そんなに違うんですか?」


解説「んまあ!ってほど違います」


実況「『んまあ』とか言われても、どのぐらい違うのか分からないんですが」


解説「先ほど出てきた『初級』。対象読者に中学生が含まれていましたが、中身としては掲載漢字を絞ったり、解説を少なめにして読みやすくしたり、と漢和辞典を簡便化したものでした」


実況「え、はい。ということは、小学生向けはさらに簡単にした漢和辞典、とかですか?」


解説「そういう漢和辞典もあります。今回のアワードにエントリーしている三省堂の『例解小学漢字辞典』がまさにそれですね」


実況「親字数は3000字ですから、常用漢字+900字ぐらいですね」


解説「この『例解小学漢字辞典』は小学生向けの漢和辞典としては本格派です。一方で、教育漢字に特化した辞書も各種出ています」


実況「へー。教育漢字というのはなんですか?」


解説「小学校で習うよう定められている約1,000の漢字の通称です」


実況「なるほど。常用漢字よりもさらに数が絞られるわけですね」


解説「そして漢字は部首順や五十音順だけでなく、習う学年順に並んでいたりします」


実況「新たな勢力の登場!?」


解説「解説も詳しい辞書もあれば、非常に簡単で辞書と言うよりは字書なものもあります。良く言えば多種多様、悪く言えば玉石混淆って感じですね」


実況「玉石混淆……」


解説「大人向け漢和辞典に比べると市場は小さいものの需要が高く、蠱毒されてない的な」


実況「だから言い方!!」


解説「出版社もベネッセやポピーなど大人向けとは違った勢力図があります」


実況「大人向けとは市場や販売戦略が違うわけですね」


解説「というわけで、小学生向け漢和辞典のおすすめについては小学生向け漢和辞典オブザーバーにお聞きください」


実況「そんなオブザーバー、いるのか……?」


解説「以上、ハンディ漢和辞典のカテゴリでした」


実況「一応分かりましたけど。やはり、このはなしはもっと早くすれば良かったのでは?」


解説「そうですねえ。でもこのカテゴリはあくまで目安というか。どちらかと言えば、出版社側の都合的な部分がありまして」


実況「出版社側の都合、ですか?」


解説「なんというか、マンガで言うところの『少年マンガ』『青年マンガ』『少女マンガ』『女性マンガ』のレーベル、みたいな」


実況「はあ」


解説「少年向けのマンガとして売ってるけど、少年しか読めない・読まないわけではない。というのと同じですね」


実況「というと?」


解説「漢和辞典を選ぶとき、中学生だから中学生以上対象の『初級』がいい、というような選び方はしないでほしいです」


実況「逆に一般の大人が『初級』を選んでもいい?」


解説「そういうことになります。カテゴリにはとらわれず選んでください」


実況「それはなぜでしょうか?」


解説「ひとくくりに『上級』といっても、その専門度……ガチ度?は出版社ごとにバラバラですし、『初級』も簡便度はバラバラです。カテゴリは目安であって、程度レベルの保証ではありません」


実況「そーなんですね。でも、そこまで『ただの目安』と強調されると、逆にカテゴリの存在価値に疑問がつくんですが?」


解説「そう。あったから、なに?です。とはいえ、同じ出版社から複数の漢和辞典が出ているせいでワケが分からなくなったときは、このカテゴリを意識して比べてみると、ちょっと判別できます」


実況「あー。同じ出版社の漢和辞典を比べて選ぶときに使えるんですね」


解説「そういうことです」


実況「三省堂とか?」


解説「三省堂は出しすぎでカテゴリの中でもダブるんでアレですが。学研、小学館、旺文社、大修館なんかはこのカテゴリで見るとすっきり判別できますよ」


実況「なるほど。役に立つような立たないような微妙な情報をありがとうございます」


解説「 ₍₍ (̨̡⸝⸝´꒳`⸝⸝)̧̢ ₎₎ 」


実況「さて、来週パソコンはどうなっているんでしょうか。もうちょっとちゃんと中身のあるアワードができるんでしょうか、たかぱしさん」


解説「さっぱり分かりません」


実況「念のため年仕舞いのご挨拶でもしておきますかね。……アワード2023を名乗りながら年を越そうとしてるのが不安です」


解説「大丈夫です。こっそり最後の数字を4にしておけば大丈夫です」


実況「大丈夫じゃねえよ。ということで、皆さまよいお年をお迎えください」


解説「さいー」

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