『漢和辞典初級~中級者』さんが『部首索引で漢字を探す』場合に使いやすい漢和辞典

実況「全国10万のホワイト企業で働くみなさま、こんにちは。漢和辞典アワード、実況のかげると」


解説「解説はたかぱしです」


実況「前回に引き続きお題は『漢和辞典初級~中級者』さんが『部首索引で漢字を探す』場合に使いやすい漢和辞典ということですね、たかぱしさん」


解説「はい、部首索引を使った引き方を見ながら解説していきたいと思います」


実況「部首索引を使った引き方を見ながら、ということは実況の本領発揮の予感! さあ、まかせてください」


解説「では実際に『翔』という漢字を部首索引から引いてみましょう」


実況「時は令和、世は平和。漢和辞典アワードの大地に舞い降りたのは漢字の『翔』。いわずと知れた人名用漢字863字の一角! 2022年名付け人気漢字ランキングでは堂々一位となった素晴らしい字でもあります」


解説「?」


実況「夢と希望を託されたこの漢字をどうやって調べようというのか――おおっと、おもむろに取り出されたのは、漢和辞典! これはすごい。たったひとつの漢字を調べるために、およそ1500ページもある本が用意された! しかし! 果たして一体どうやって掲載された10,000文字もの漢字のなかから『翔』を見つけようというのか。一ページ一ページ探していたのでは今年も終わってしまうことでしょう」


解説「??」


実況「どうやって、と迷う間もなく表紙を手に取り――開いた! 表紙を開いたぞ! そして開いた見返しには、なんと『部首索引』の文字。見返しには部首索引がついていた。これは偶然かはたまた必然か!?」


解説「……なんか急にしゃべりだして……? いえ、ええと、表紙を開いた次の見開きのページ、それが本で『見返し』と呼ばれる部分ですが、だいたいの漢和辞典はここに部首索引がついています」


実況「必然だったー! しかし、200個以上ある部首のなかからなにを、どうやって見つけようというのでしょうか」


解説「えーと。とりあえず、部首索引も辞書によって多少の違いがあるものですが、とはいえ使い勝手にそこまで大きな違いはないかと、思います。普通に調べたい漢字の部首を一覧から見つけるだけですけど、『翔』の部首はなにかわかりますかね」


実況「立ちはだかる最初の壁。それは部首。この部首を正しく答えない限り、我々は『翔』に辿り着けない、そういう状況です」


解説「あ、いや、別に間違えてもいいんですけど。むしろ初心者さんや中級者さんは間違えたり迷ったりすることを前提に『引きやすい辞書』を選考アワードしてますので」


実況「思いの外、壁は低かった! これは安心して漢字を探すことができます。改めて『翔』の字体を観察してみれば――【羊】! かあるいは【羽】?」


解説「漢字の部首を正しく見極めるのは、なかなか難しいものです。【木】とか【言】とか部首として見慣れたものならともかく、200個以上ある部首のなかには馴染みのないものも多いですし。あまり“正しい部首”にこだわらず、とりあえずそれっぽい部首がないか探してみましょう。で、【羊】と【羽】のどっちにします?」


実況「うーん……なんとなく左にあるほうが部首っぽいので【羊】で!」


解説「ということで、『翔』を部首【羊】で引いてみます」


実況「そして行われる、指をくいくい動かす変な動き……これは、この変な動きで部首の画数を数えているというのか……!?」


解説「部首【羊】は6画ですね」


実況「【羊】は6画! ということは、部首索引の6画を探していき――とうとう見つけた。我々は部首【羊】を見つけたのです!」


解説「そこまで力込めて実況する? 索引で部首見つけただけなのに? ちなみに、部首【羽】も6画で、たまたま【羊】の隣に並んでいますよ」


実況「なんと、部首になっても【羊】と【羽】は仲がいい……! この二つを引き離して部首引きなどしていいのでしょうか? あまりに外道な行い。もはや【翔】という部首を立てるべきでは」


解説「……大丈夫です。『われてもすゑに逢はむとぞ思ふ』ので」


実況「まさに相思相愛」


解説「で、部首索引の【羊】にページ数が書いてあります。このページを開けば、そこから部首【羊】の漢字が載ってるわけですね」


実況「いともかろやかにページをめくり、瞬く間に開いたのは、【羊】部首の先頭ページ。これは実に見事! もはや九割がた『翔』を見つけられたと言っても過言ではありません」


解説「過言ですって。部首の先頭ページを開いた時点では、まだ五割も到達していません」


実況「まさに『百里を行く者は九十を半ばとす』」


解説「というより、部首を開いたからといって、この部首のなかに本当に目当ての漢字があるかもまだ分かりませんし、まだぜんぜん油断できない状況というだけですよ」


実況「せっかく目当ての部首に辿り着いたところへ、なんとも無情な言葉。現実は斯くも厳しいものなのか」


解説「部首を開いたら、ここから『部首内画数』を辿って探していくわけですが。そう、漢和辞典や部首に不馴れな場合ここが難所! 一生懸命に部首内画数を数えて、見つけて、さらにその中から目当ての漢字を見つけて……という作業が大変なだけでなく、がんばったのにそもそも部首が間違っていて目当ての漢字はここにはないのにずーーーっと探してしまった……とか、部首内画数の中を探したが見つからなかったから他の部首かと思って探し回るも見つからず、ようやく見つけてみたら部首は間違っていなくて部首内画数を数え間違えてただけだった……とか、とにかく手間と時間が無駄にかかってしまって漢和辞典のバカヤロー、って気持ちになりかねない、大変な難所なのです!」


実況「ああ……やっぱり僕に部首引きは早かったんだ……音訓索引使っていいですか」


解説「ところがどっこい」


実況「やぶからわっしょい?」


解説「もちろん(一部の親切な)漢和辞典はそんな初心者さん(と中級者さん)に救世主をご用意しております!」


実況「おおおお! さすがです、(一部の親切な)漢和辞典!!」


解説「それこそが『部首内文字一覧』」


実況「おおおお……おお? ええと、それはどういったものでしょうか?」


解説「読んでそのまま字の如く、その部首で載っている漢字を一覧にしたものです。部首の冒頭に部首内画数順で並んでいます」


実況「なるほど。どうやって使うんですか?」


解説「部首索引で冒頭ページを開いたら、まずこの一覧の中から目当ての漢字探せばいいんです。一覧形式なので本文で探すより断然楽です。部首内画数を間違えていても、前後の画数も簡単にチェックできるので見落としが減ります。そしてこの一覧になければ部首間違えてるってことがすぐ分かります」


実況「時間と手間の節約ができるんですね」


解説「さっそく【羊】の部首内文字一覧で『翔』を探してみましょう」


実況「えーと、『翔』の部首内画数は6画ですよね。6画6画……の中にない!? 5画や7画にも……いない……」


解説「まあまあ。落ち着いて。『部首内文字一覧』の横をご覧ください」


実況「え、なになに……『違う部首の漢字一覧』……? の中に『翔』がいます!」


解説「いますねえ。このように間違えやすい漢字をピックアップして一覧にしてくれている親切な辞書もあるんですねえ」


実況「間違え一覧に『翔』のページ数が書いてあるから、あとはそのページを開くだけじゃないですか。……開いてみれば、『翔』は【羽】部首の字だったのか……完全に騙された……」


解説「でも簡単に引くことができましたよね。これが初級~中級者さんにおすすめ辞書です」


実況「これはしてやられました。で、この『部首内文字一覧』がついている漢和辞典はどれなんですか?」


解説「いろいろあるんですが、一番親切で優しいのは大修館書店の『新漢語林』と『現代漢和辞典』ですね」


実況「一番と言える理由はなんでしょうか?」


解説「大修館書店の漢和辞典の『部首内文字一覧』はもはや一覧ではなく索引です。すべての漢字の掲載ページ数がついています」


実況「ということは?」


解説「部首索引→部首内文字索引→漢字というページの流れを追うだけですから、ほぼ迷うことなく三回ページを開くだけで漢字へ辿り着けます。ボーリングでいえばガターバンパーついてるようなものです」


実況「すごいですね、それは」


解説「たとえ部首を間違えて開いても、『新漢語林』は『部首内文字索引』のなかに間違えやすい漢字も含めて掲載してますので、もはや部首を間違えたことにも気づかず引けちゃいます」


実況「優しい……そんな優しい大修館書店を裏ボス呼ばわりしてたんですね」


解説「むしろ楽に漢和辞典を引かせることによって己は上級者だと錯覚させ、漢和辞典沼へ引きずり込む裏ボスの策略でしょう」


実況「優しさは素直に受け取りましょうよ!!」


解説「まあ、ともかく『新漢語林』と『現代漢和辞典』は部首索引から引きやすい親切設計の漢和辞典です」


実況「ほかにも『部首内文字一覧』のある漢和辞典はあるんですよね?」


解説「もちろんです。全漢字のページが表記されているものはなかなかありませんが、部首内画数ごとに先頭ページ数が書いてあるものや、ページ表記はなしで漢字一覧のみ書いてあるものなど、各辞書いろいろなので非常に面白いです」


実況「というわけで、『漢和辞典初級~中級者』さんが『部首索引で漢字を探す』場合に使いやすい漢和辞典は「大修館書店の漢和辞典」がおすすめです」


解説「ただまあ、同じ大修館書店でも『大漢和辞典』に『部首内文字一覧』がついていたか記憶にさっぱりないので。『大漢和辞典』購入を検討されている初心者さんはご注意ください」


実況「24万とかする辞書を買おうとするのは初心者じゃないし、絶対『部首内文字一覧』の有無は購入決定打ではないですね」


解説「次回は『音訓索引で漢字を探す場合』とかいってみたいと思います」


実況「予告はあくまで予定ですので予告なく予告は変更される場合がございます!」



【データ】


●部首内文字一覧 あり


○全漢字にページ表記付き

☆『新漢語林 第二版』[大修館書店]

☆『大修館 現代漢和辞典』[大修館書店]


○部首内画数ごとにページ表記付き

☆『角川 新字源 改訂新版』 [角川書店]

☆『全訳 漢辞海 第三版』[三省堂]

☆『新明解 現代漢和辞典』[三省堂]


○ページ表記はなし

☆『例解 新漢和辞典 第三版』[三省堂]

☆『旺文社 漢字典 第二版』[旺文社]

☆『現代漢語例解辞典 第二版』[小学館]


●他の部首の漢字一覧のみあり

☆『新明解 漢和辞典 第四版』[三省堂]


●なし

☆『漢字源 改定第六版』[学研プラス]

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