引きやすさのはなし

どきどき!? 初めてのマイ漢和辞典の選び方

実況「どうも皆さま、こんばんは。ようやく部首の呪縛から抜け出しました漢和辞典アワード、実況のかげると」


解説「解説はたかぱしです」


実況「いやあ、部首の話が長かったですね、たかぱしさん」


解説「そうですねえ。大変有意義な時間でした」


実況「そうですか、それはよかったですね。それで、部首順の漢和辞典における部首の話を延々延々延々延々してきたわけですが、次はどんなところを見ていくんでしょうか。まだなにか他にも部首順辞書の話ってあるんですか?」


解説「今回からはちょっと変わりまして、部首順辞書の中で目当ての漢字を見つけやすいのはどんな辞書かというポイントを見ていきたいと思います」


実況「おおー、辞書の引きやすさの話ですね! 実に選考アワードっぽいです。いい感じです」


解説「なんとなく漢和辞典を買いたくなって、ふらりと行った本屋。しかし辞書の棚には何冊もの漢和辞典。果たしてどれを買ったらいいのか……迷う。そんな経験が誰にもあると思いますが」


実況「ないですね」


解説「出版社? 編纂者? 情報量か内容か、どの漢和辞典も箱や帯にアピールポイントがずらずら並んでいて、果たしてどこ見て選べばいいのか分からない! どれもこれも同じに見える! 辞書の紙面を見比べたって、漢字がいっぱい並んでることしか分からない。結局一番使いやすい漢和辞典ってどれなの……? なぁんて、なっていたりしませんか?」


実況「まあ。学校で漢和辞典を買いなさいと言われたけれど、どれを買えばいいのかよく分からないな……ぐらいならあるかもしれないです」


解説「それぞの漢和辞典にはそれぞれの特色や強みがあります。そういう特色から自分の用途や漢字レベルに合わせて選ぶのが理想でしょう。でも! これまでぜんぜん漢和辞典を使ったことがない、なにに使うか分からない、どう使うかも分からない、漢和辞典初心者さんにとってそれは難しいですよね」


実況「確かに。部首立ての話とかされても普通の人は『えー! 新部首が立てられてる漢和辞典なの!? じゃあそれ買う!!』ってならないですね」


解説「部首立てで辞書を選ぶのはもはやマニアの境地。それはともかく、掲載漢字の多さとか解説の充実度で選ぶこともできるんですけども、初心者さんならまずは「辞書の引きやすさ」重視で選ぶのもおすすめです」


実況「なるほど。どんなに中身がよくても、探してる漢字を見つけられない辞書じゃあ使い勝手悪いですもんね」


解説「というわけで、初めてのマイ漢和辞典の選び方! どんどんぱふぱふ」


実況「うーん、思ってたより選考アワードっぽくないな。まあいいですけど」


解説「対象、漢字を引きやすい漢和辞典がほしい方。初めての漢和辞典に迷っている方。とりあえず漢和辞典がほしい方」


実況「『おすすめの漢和辞典5選』みたいなネット記事を読んでもピンとこなかった方もぜひお読みください」


解説「やはり実際に本屋で漢和辞典を手に取ってチェックするのが大事です」


実況「本屋にしろ古本屋にしろ、漢和辞典は大事な売り物なので手に取る際は扱いに十分ご注意ください」


解説「特に箱への出し入れですね。下手なしまい方をすると辞書が折れたり破れたりする危険性があります。漢和辞典は非常に繊細なので」


実況「たかぱしさんもよく本屋でドキドキしながら漢和辞典をいじくってますね」


解説「万が一にも痛めたら責任をとって買わなきゃ、とドキドキしています」


実況「たぶんドキドキの意味が違いますね」


解説「とりあず買う覚悟で取り出した漢和辞典の前小口を見てみましょう!」


実況「そこまで覚悟決めなくても丁寧に扱えば大丈夫です。っていうか、前小口ってどこですか?」


解説「本を閉じた状態で背表紙の反対側、開く面のことですね。だいたいの辞書はここに“インデックス”が印刷されています」


実況「インデックス?」


解説「辞書用語のインデックスは前小口に印刷された“検索用の見だし”のことです」


実況「あー。国語辞典でア行やカ行ごとで段分けとかされてるやつですね」


解説「漢和辞典の場合は、部首の画数ごとにマークされていたりしますが、とりあえず今はそれはあんまり気にしなくて大丈夫です。さくっと無視しましょう」


実況「らじゃー」


解説「前小口のインデックスでチェックしてほしいのは、音訓索引や総画索引がどこにあるかすぐ分かるようになっているか、です」


実況「たとえばどういう辞書が分かりやすいんでしょうか」


解説「音訓索引のページは赤でマーク、総画索引は灰色でマークされている、なんて感じに色分けされているとすぐに分かって開きやすく、大変便利ですね」


実況「なるほど。逆にどういう辞書はわかりにくいと言えるんでしょう」


解説「索引がマークされてない、音訓索引と総画索引が分けられていない、というのはちょっと分かりづらいですね。とはいえ、最近の漢和辞典は大抵しっかり識別できるようになっているので、自分にとって見づらくないか軽くチェックすれば大丈夫です」


実況「いろいろな漢和辞典の索引インデックスを見比べてみると、色分けされているインデックス、段わけされているインデックス、小さなマークだったり全体染め付けだったり、なんの索引か名前までしっかり印刷されていたりと、いろんなデザインがあるんですね」


解説「お好みでお選びください」


実況「うーん、正直どれでもいいですね」


解説「というわけで、次のチェックポイントです。次に漢和辞典を痛めないように気をつけながら、ぱらぱらぱらとページをめくってみましょう」


実況「ぱらぱら漫画の要領ですか?」


解説「……ぱらぱら漫画……まあ、ぱらぱら漫画の要領ですが。別にぱらぱら漫画ではないのでゆっくりぱらぱらしてください」


実況「ぱらぱらぱら〜ですね。このぱらぱら行為に何の意味があるんでしょうか?」


解説「ぱらぱらしながらページ数表記がどこにあるか確認しましょう。ページ数はぱらぱらしながら見やすいところに書いてありますか? 見やすい文字で書いてありますか? 943ページが開きたい!と思ったときにすぐぱらぱら見つけられるか、チェックです」


実況「ページ数表記って辞書によってそんなに違うんですか?」


解説「上の隅だったり下の隅だったり。下の真ん中だったり辞書で違います。アラビア数字のこともあれば漢数字のこともあります。字体も細い太い大きい小さいで結構見やすさが変わりますし。なにより、人によってぱらぱらの仕方が微妙に違うので、自分でぱらぱらしてみたときにページ数が見やすいかどうか、これをチェックしましょう」


実況「それで実際に辞書を手に取ってチェックした方がいいんですね」


解説「出版社サイトなどに掲載されている紙面サンプルを見てチェックしてもいいんですが、やはりぱらぱらしてみるのが一番です」


実況「ということは、ページ数が一番見やすかったものを選べばいいんでしょうか?」


解説「ページ数表記だけで決めるのはまだ早いです。もう一つ重要なチェックポイントがあります。今度はどこでもいいので本文ページを開いてみてください」


実況「おおー。漢字がいっぱい並んでますね(笑)」


解説「しかし! チェックポイントは本文ではありません。欄外部分を見てください。どこになにが書いてあるか確認しましょう」


実況「なんかいろいろ書いてありますね。なんですか、これ」


解説「この欄外部分こそが各辞書によってデザインされた「辞書の引きやすさ」の分かれ目! 辞書によって大きく異なる注目ポイントです。が、難しいことは考えず、必要最小限のチェックポイントを確認しましょう」


実況「そこだけを見れば、自分にとって使いやすい漢和辞典かどうか分かる、そういうことですか! それはすごい」


解説「チェックポイントは3つです。いま開いているページの漢字の部首はなにか。開いているページの漢字の部首内画数はなにか。開いているページに掲載されている漢字の一覧。この3つがどこにどんなふうに書いてあるか、チェックしてください」


実況「部首、部首内画数、漢字の一覧、をチェックですね」


解説「どこに書いてあるかを確認したら。もう一度ぱらぱらしましょう。ぱらぱらしながら3つの欄外情報が難なく見られるか、見やすいか、そこがとても重要です」


実況「ページ数と同じ要領でぱらぱらしてみます。あー。個人的には、漢字の一覧が上の欄外に付いているものより、外側柱の真ん中についている方が見やすい気がしますね。この辞書は部首内画数の数字が大きく書いてあるし、いい感じかも」


解説「というふうに試してみて、自分にとって見やすいなと思う漢和辞典を選びましょう」


実況「理屈はよく分かりませんが、これが「自分にとって引きやすい辞書の見分け方」なわけですね。理屈は分かりませんが」


解説「騙されたと思ってとりあえずお試しください」


実況「まじで騙されてたとしても責任は取りかねるんですが。大丈夫ですかね」


解説「そうですねえ。まあ、別に漢和辞典が買いたいだけなら、パッケージの見た目とか価格とかで決めちゃっても別に問題ないと思います。どの漢和辞典も素晴らしいです。どれ買っても正解です」


実況「漢和辞典狂信者ですか。さすがにどれでもいいっていうのは、どうなんでしょう」


解説「ぶっちゃけ今現在本屋に並んでいる漢和辞典なんて、極寒の漢和辞典界を生きながらえてきた猛者ばかり、もはや蠱毒の虫みたいなもんです。どれでも大丈夫です」


実況「言い方! 気をつけて! というわけで、初めてのマイ漢和辞典の選び方、半信半疑でお試しください」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る