部首順辞書のはなし
部首立てのはなし
奥が深いぞ、部首分け漢和辞典
実況「今回から部首順の辞書についてさらに詳しく見ていきたいと思います。よろしくお願いします、たかぱしさん」
解説「せっかく新しく手に入れた『五十音引き講談社漢和』の話ができなくて悲しいです」
実況「すみませんね! 無事に届いて良かったですね!」
解説「想像以上に良い漢和辞典が届いて大満足です。でも最初に開いて思いました。あ、やっぱりこの五十音引きはちょっとびみょ――」
実況「ストップ! その話はまた今度で! 今は部首順の辞書に集中してください」
解説「はあ」
実況「やる気が見えないなあ。ほとんどの漢和辞典が部首ごとの並びということですが、その部首の順番はどうやって決まってるんでしょうか?」
解説「画数の少ない部首から並んでいます。一番画数の少ない部首は【
実況「同じ画数の部首はどうするんですか」
解説「『
※『康熙字典』:中国、清で作られた字書。1716年頃完成。「康熙」というのは当時の元号。近現代漢和辞典の親玉的存在。
実況「えーと、部首って『ごんべん』とか『さんずい』とか『こざとへん』とかですよね。2,30個はあったりするんですかね」
解説「『康熙字典』の部首が214個です」
実況「あ、想像より多い……」
解説「そして学研『漢字源』の部首が219個。三省堂『漢辞海』は減って212個。大修館『新漢語林』が220個。三省堂『新明解』は285個」
実況「70個も増えてる!? というか、そんな辞書によって違うものなんですか……?」
解説「違います。部首、自由です」
実況「自由なんですか」
解説「そもそも漢字が案外フリーダムなものなので。部首も読みも意味も形も、意外とヌルヌル不定形です」
実況「ええー。ちゃんと決まっているものだと思ってました」
解説「学校で筆順(書き順)とかも習いますが、あれはどっかの偉い人が勝手に決めただけで、漢字本人にしてみたら『別に好きに書いてくれていいが?』って感じで大きなお世話です」
実況「一応どこかの偉い人が決めたものなら、書き順も大事にしてあげてください」
解説「どこにでもいますよね~、何でもきっちり決めてしまいたがる人」
実況「正しくきれいな字を書くためのルールですって」
解説「そもそも『右』の一画目を縦棒にしてるのに、『友』の一画目を横棒にしてるのはおかしいわけですよ。そこは縦棒やろ」
実況「二度目のストップ! 話が脱線しすぎです」
解説「部首というのは漢字をグループ分けする方法ですから、どの部首でどうやって分類したら辞書が分かりやすく使いやすくなるか、それぞれの漢和辞典が追求している、いわば漢和辞典の信念の見せ所です」
実況「なるほど。と言いつつ、いまいち実感がわかないので、具体例とかで解説していただけませんかね」
解説「たとえば、部首の【
実況「まあ、すごく似てますが。角っとしてる「はこがまえ」と、丸っとしてる「かくしがまえ」、見分けられないこともないですよね」(※フォントによって変わりますので、可能であれば明朝体でご確認ください)
解説「では問題です。次に挙げる漢字は【
実況「え、唐突だな」
解説「1,『区』」
実況「えーと。角っとしてるから【
解説「2,『匹』」
実況「角っとしてるから【
解説「3,『匿』」
実況「角っとしてるから【
解説「ぶっぶー。3つとも本来は【
実況「うすうすそんな気はしてました(笑) だから別に悔しくないです」
解説「どちらの部首の漢字も少ないし、ひとつにまとめた方が漢字を探している人には親切だろう、というのが【
実況「それは一緒でいいですね。むしろ、一緒にしない派はなにを考えてるんでしょうか」
解説「角川『新字源』や明治書院 『新釈漢和』が分けていますが、【
実況「なるほど。見た目よりも意味優先ということですね」
解説「似たケースとして【
実況「もう、どうでもいい気がしてきました。ともかく、部首順と一口に言ってもいろいろ違うわけですね。よく分かり――」
解説「? 部首立ての説明、まだまだ序の口ですが?」
実況「おっつ。どうやら沼に足を踏み入れた模様……。しばらく部首の話が続きます」
【データ】
見分けつかないから一緒でいいよね♪派
・がっつり合体(4組合体)
☆『明解漢和辞典』[三省堂]
☆『漢語林』[大修館書店]
・だいたい合体(3組合体)
☆『漢字源 改定第六版』[学研プラス]
☆『岩波 新漢語辞典』[岩波書店]
・ちょっと合体(2組合体)
☆『全訳 漢辞海 第三版』[三省堂]
☆『新明解 現代漢和辞典』[三省堂]
☆『旺文社 漢字典 第二版』[旺文社]
☆『現代漢語例解辞典 第二版』[小学館]
「
(1組合体)
☆『新釈漢和辞典 新訂版』[明治書院]
意味が違えば別のグループだぜ☆派
☆『角川 新字源 改訂新版』[角川書店]
☆『漢字源』[学習研究社]
☆『新漢和辞典』[金園社]
***
解説「ところで、かげるさんや」
実況「なんだい、たかぱしさん」
解説「やっぱり思うんだけどさ。四大漢和辞典なんて持ち上げておきながら、『漢語林』が古い初版しかないってのは、どうなのかな」
実況「どうもこうも、ないものはないんだから仕方ないんじゃん」
解説「仕方ないで済ませていい問題なのかな。なんせ、相手は裏ボスの大修館書店様だよ。無事ですむのかな」
実況「なんだよ、大修館に消されるとでも言いたいのか?」
解説「まさか。でも、あんまりにも失礼じゃないかな」
実況「まあ、それはそうだけども」
解説「せめて『新漢語林』をちゃんと手に入れて、アワード2023はやるべきなんじゃないかな」
実況「そう言いながらヤフオクとメルカリを漁るのはやめろ。ちゃんと本屋で新品を購入したいからって、それで今まで買えずにきたんだろ」
解説「古本ならともかく、新品の漢和辞典をぽんぽん買えるほどお小遣いに余裕ないからね」
実況「3000円のプラモは買ってるがな」
解説「でも。やっぱり『新漢語林』抜きでやるのは、無理だと思うんだ」
実況「いや、まあ、うん、でも」
解説「ってわけで、ちょっくら古本屋巡りしてくるねー!!」
実況「あああああ!?」
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