第21話 光

 時は平安時代


 朝氷柱が悔しそうに、それを眺めている。それは、自ら死を選んだ者なれの果てで、それは光の死神として致命的な事であった。


「また、救えなかった……」

「あれあれ。また、失敗かい?」


 死神の少年が何処からかともなく現れる。


「お前か……」

「ここまで、成績悪いとね」

「大体、お前は何者なのだ?」

「僕はただの死神さ名前さえ忘れてしまったよ。そんなことより君は成績が悪すぎた、もうすぐ迎えが来るよ。さてね、君も意地を張らないで闇の死神になれば良い。闇は楽で良いよ。ただ、ロウソクの炎を消せばよいだけ」

「私は……」


 名無しの死神の提案に困惑するしかなかった。


「成績を上げないと君自身の霊能力が尽きるよ」

「そんな……」


 すると、自分の体が透けていくのが分かる。


「もう、その時かい?あっけないね」


 私は自分の存在が消えていくことを感じながら意識を失っていった。


 気がつくと、どこかの川べりを歩いていた。


「やあ、また会ったね」

「お前か……ここは?」

「さあ?僕にも良く分からない。けど、ただこの川を越えればもう戻れない。もう一度聞く、闇に落ちる気はあるかい?」


 別にこの世に未練があった訳でもないが、私は平凡な生活にあこがれて、もしかしたらと思い、闇を受け入れる事を決断した。


「分かった。闇を受け入れよう」


 死の近い者が何らかの方法でその命を繋ぎ止めるのをやめさせる。闇の力でろうそくの炎を消すだけ。


 そして、初めて人を氷の刃でつらぬいた。


 ……―――。


 名無しの死神の少年は言った。闇の死神はその闇ゆえに長くこの世に残ることが出来るらしいが、平凡な生活とはさらにかけ離れって行った。


 やがて、時は流れ、ある陰陽師に出会う。私にとっては、どこかの姫様でもただの一匹の獲物でしかなかった。


 しかし、その姫様も天寿をまっとうして、彼と戦う理由は亡くなったが、その頃の

 

 私は闇に犯され、もはや人としての感情を失っていた。


 結局、彼と何度も戦うことになるが決着はつかなかった。彼の強さの秘密は何かまだ、守るべきものがあるらしい。そして、彼と接しているうちに、ほんの少しだけ救われた気がした。


 そして、決着をつけることなく彼は死んだ。


 私は彼の最後を見届けようと、川の前へと向かった。


「もう、行くのか?」

「私は未来に希望を残してきた、君のもまた姫様に出会うことがあれば、その心にあるかすかな光によって、君の永遠の苦しみから解放されるかもしれない」

「ホント最後までお前は皮肉なことを言うな」

「お互い様だろ」

「そうかもしれないな」


 彼との別れと終えて私は待つことにした彼の言う光を見届けようと。私は自身を維持するためにこれまで、以上の仕事をこなさなければならなかった。心はさらに闇に覆われて行ったが何故か彼の言葉だけが唯一の救いだった……。


 そして彼の言った未来への光に出会った。しかし、心は闇に支配されもはやどうすることも出来ないことを悟り、ただ闇の死神として、彼のロウソクの炎を消すことにした。


 決戦の時は近い、今はそれだけがこの世に存在している理由だった。


***


 科師部の部室に今日は何故か夕香と零が居て、ダビンチは戦闘態勢だ。


 すると、あの死神が現れる。


「あーら、皆さんおそろいで、ごきげんよう」

「表に出ろ」


 夕香がキツイ口調で怒鳴る。


「あーら、怖い、怖い、良いですどこでも行きますわよ」


 近くの公園に一同は移動した


「夕香お前の目的は何だ?」

「それは、そこにいる死者たちですわ」

「この子たちは害もないし、無理やり冥界に送る必要はない」

「相変わらず、甘ちゃんですこと」

「話あってもダメが、零行くぞ、決着をつける」

「吾輩も手伝おう」


 ダビンチは参戦する。


 闘いは死闘なり、言葉では表せない凄さだった。しかし、戦況は段々悪くなり、ダビンチ、零、は倒れ動けなくなってしまう。残りは夕香だけになる。


「相変わらず弱いですね」

「まだ、だ」


 夕香は必殺技である刀の抜刀術を使う。朝氷柱は防御結界を張るが吹き飛ばされ、地面に叩きつかれる。夕香の霊力は限界を超えたらしく、ゆっくりと地上へと降りていく。


 「くう、少し霊力を使いすぎた……」


 しかし、朝氷柱は起き上がり空中で氷の刃を作り出す。


「少し効きましたよ。でも、もう戦えそうにないですね」


 どうする?俺が戦闘に出て、そのスキに、皆を非難させるか。


「朝氷柱、俺が相手をしてやる」

「あなた、本当にムカつきますわね、力もないくせに、へらへらと」


 氷の刃がこちらを向き放たれる。


 思い出せ宮姫を救った時と同じで良いはずだ、俺は両手に霊力を込めてみる。


 両手は光だし氷の刃の群れと正面衝突し俺は後ろに弾きと飛ばされる。


「あら、あなた、そんなこと出来て……?でも、一回が限度ですわね、今のあなたなら、刃一本で十分」


 そして、刃が作られ俺に放たれる。


 所が、宮姫が俺の前で盾になり、氷の刃に貫かれる。


「宮姫!!!何故?」

「決まっておろう、そなたは、どこの誰よりも幸せにできる力がある。きっと、あの方以上に。そして、我もまた、そなたをあの方以上にお慕いしています」

「なんでそんな事を言う?まるで、もう、ダメみたいじゃないか?」

「そうしゃな、本当に最後だから言えるのかもしれないな……」

「よし、この前みたいに救ってやる」


 俺は霊力を集中させようとした瞬間。宮姫の体が透けていき、やがて消滅する。


「宮姫!!!」

「あら、その『陰陽の髪飾り』、消滅してしまいましたね、あっけないですね、もっと楽しませてくれると思ったのに残念ですわ」

「俺は女を殴る趣味は無いが、お前は許さない」


 俺は全霊力を右こぶしに力を込め朝氷柱に殴りかかる。朝氷柱も氷の刃で対抗するが、ことごとく氷の刃を壊し、朝氷柱を思いっきり殴る。朝氷柱は後ろに吹き飛び。俺も霊力が切れたのか、その場に座り込む。


「やったか?」

「うう……今は効きました。と言うより、ヤバいですわ」

「後は任せろ」


 夕香が抜刀術で朝氷柱に切りかかる。すると技は完全に決まり、朝氷柱を切り裂く。


「ふーう、どうやら私の負けの様ですね。やはり敗因は、そこの僕ちゃんでしたか」

朝氷柱は透けていき消滅する。


 勝った……しかし、宮姫が……。


 俺は泣き崩れるしかなかった。


***


 川のそばを朝氷柱が歩いている。ここはいったい何処なのだろう?何度来ても不思議な気分だ。


「やーあ。また、ここで会ったね」


 そこには名無しの死神が、大きな岩に上に座っていた。


「お前か……」


 朝氷柱は不機嫌そうに答える。


「相変わらず冷たいね」


 名無しの死神は少し嬉しそうにしている。どうやら、それも朝氷柱には気に食わないらしい。


「皮肉を言いに来たのでは無いだろ。何の用だ?」

「君はひょっとして、わざと負けたのではないかとねと思ってね。君はあの少年の秘めた力を見抜いてね。わざと、怒らせる様な事をして、力を引き出そうとしたのかな」

「今となってはどうでも良いことだろ」


 朝氷柱は嫌悪感を露にしている。少し心あたりがあるようだ。


「そうかな、君はどこかで死に場所を探していたようだったけどね、正確には消えるに場所だったか」


 目を閉じ上向き、大きな息を吐く。


 名無しの死神の話に隠してきた答えを言われたようだ。


「そんなこと。お前には関係ないじゃなくて」

「それが、あるのだよ。君は長年、死神として活躍してくれたから、提案を持ってきたのだよ」

「提案?」

「そう、提案。ちなみに宮姫にも提案しておいたけどね」

  

―――


 あれから季節は変わり夏になり、平凡な毎日が続いていた。竹野や風夏との関係は良好で夏にて東京まで行き、年に二回しか行われないイベントや海水浴に行った。楽しかったはずなのに、心の中には大きな穴が開いたようだ。皆もそれなりに明るく振舞っているが、宮姫の話題には触れないでいた。あれから夕香からの依頼も増えて手伝いで忙しい。どうやら朝氷柱が片づけていた厄介な問題も夕香がやるようになった為だ。


 夏休みも終わり新学期が始まった。


「えー、注目、今日は転校生を紹介する。入って来たまえ」

「『宮野 姫』です」

「『朝倉 氷柱』です」


 そこに居たのは宮姫と朝氷柱だったが、その姿は人そのものだった。


 そして、二人はこちらに近すき。


『ねえ、生まれ変わりって信じる?』


 どうやら、これから楽しい学園生活が始まるらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

姫様はツンデレ属性なのですが。 霜花 桔梗 @myosotis2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ