換気扇

@cafe_M

換気扇

換気扇の穴から見える風景がきみのすべてか保護した猫よ


密林のバナナになって身を捧げひっそり一生を終えたかった


通過待ちのろのろ続く我が人生傍から見るよりきっと悪くない


冷蔵庫にアイスを仕込む小さな喜び繋いで生きる


パン屋になってた未来あったかもねきみの隣で


人間の4倍の速さで老いて行く猫を4倍の愛でもてなす


風に舞う商店街の短冊に「男と女分かりあえますように」


他人にはなれないことをあの頃の私はちゃんと知らなかったな


10年はあっという間10年を8回と思えばあっという間


戦争のドキュメンタリー見ておれば今とまったく変わらぬ世界


少なくとも数年前までウエストがゴムかなんて気にしたことなかった


こどものわたしお母さんが女だと知らなかった


ノビヨレを直す洗剤手にとってふうむと夫をしばし眺める


口内炎ひとつ治ってまた出来て私を見てと言っているよに


帰れないふるさと思う何もかも嘘であったらよかったのにね


人生は捨てたもんじゃないまだまだだこんなもんじゃないいつかあなたも


四万十の行ったことない風景の光と風思う青のりのビン


誰よりも私を愛せと猫がいう猫がいうなら仕方がないか


そんなこと言ったって私選べない和菓子か洋菓子どちらかなんて


実はそう涼しくもない透ける服大人になっても知らなかったこと

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

換気扇 @cafe_M

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る