夏と飴


「ペロペロキャンディーってなんか憧れるよね」

 大きめの飴玉を舐めながらもそもそと彼が言う。

「そう? ペロペロキャンディーより屋台のりんご飴の方が食べてみたくなるけど」

「あー……たしかにそれもいいよね」

 口に入れた飴がカラカラと鳴る。その音が面白くて、舌で転がして遊ぶ。

「りんご飴って言われたらお祭り行きたくなってきちゃった」

「確かに。今やってるとこあるかな」

 ちょっと待って、と彼がスマホをつけた。未だ口をもごもごと言わせながら、画面を見つめている。

「あ、ここなら今日行けそうだよ」

 数駅離れた町の祭り。屋台も花火もありそうだ。

「いいじゃん、行こうよ」

 ソファーから立ち上がり、髪を整える。スマホと財布を持って、玄関へ。

「久しぶりのデートじゃんね」

 口の中の飴をカラリと鳴らしながら、ぼそっと彼が呟いた。

 たまには、突発的なデートがあってもいいだろう。

「もっとお洒落した方がいい?」

「十分可愛いけど、お洒落してくれたらもっと嬉しい」

「仕方ないな〜」

 ちょっと照れながら、玄関から引き返す。

「飴食べて待ってて。浴衣着てくる」

 わかった、という彼の声に飴玉が鳴る音が混じった。

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恋愛物短編置き場 綴木継人 @tsugito

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