第12話 健康維持も仕事の一つ
心を健やかに保つのと同じくらい、体の健康維持も大切だと年を取るごとに実感するようになってきた。
若い頃は目を大きく見せたいとか脚が細くなりたいとか、どうも見た目の良さに拘りがちだ。しかし年を取ると手で物を扱ったり、足で歩いたり、目で見たり耳で聞いたりという、当たり前の身体機能のありがたさが身に沁みてくる。
また若いうちは徹夜など何かと無茶が効いたが、加齢が進むとそれもままならなくなってくる。私自身もそうだったが、私の身近な人で、オーバーワーク気味な人は30代半ばごろから体に不調をきたす傾向があるように感じた。中には無理がたたって亡くなってしまった人もいた。私は一日の半分以上机に向かって作業していたせいか、30代後半に自律神経系の病に罹ってしまった。症状は、時々強烈なめまいと吐き気に襲われるというとても厄介なものだった。講義中に発症してしまい、倒れてしまった事もある。
発症してから、自分が今まで健康維持に無頓着だった事を反省し、症状を改善させる為に生活を見直すことにした。自律神経を整えるためにウォーキングや水泳で体を動かしたり、デスクワークの合間にこまめな休憩や水分補給をしたり、とにかく無理なく続けられそうなことを実践していった。その甲斐あってか、もう何年も発症していない。
他にも健康面で気を付けているのは、身体に接する時間の長い椅子や寝具は、ちゃんと自分に合ったものを選んでいることだろうか。あと職業柄特に目は大切にしようと思い、長時間見続ける液晶画面は目になるべく優しい仕様や、良いレンズの眼鏡を掛けるようにしている。毎年の眼科健診も欠かさない。
私はフリーランスだから、病気などで働けないと無収入になってしまう。だから本当に体が資本だと思うし、体が健康でさえあればいくらでも働けるという自信や安心感も湧いてくる。健康維持は仕事の一つだとつくづく思う。といっても理想の健康生活を過ごしているわけではなく、仕事の後の晩酌はやめられなかったりする。
多作な巨匠・ミケランジェロや葛飾北斎は90歳位まで長生きしたそうだが、もしも彼らの寿命が短かったら遺した作品も年齢に応じたものだっただろう。創作家にとっては長生きするのも才能の一つかもしれない。私もできればそれなりに長生きして、晩年くらいに傑作が描けたら良いなと思っている。
沖縄タイムス「唐獅子」2023年12月6日掲載
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