第2話 デルフィナ王国

Ⅲ デルフィナ王国


 応接室らしき部屋に連れてこられた。

 椅子に座るように促されたので座る。


 しばらくすると煌びやかな装飾の服を着た男が入ってきた。

 恐らく彼が国王なのだろう。その隣にさっきの警備隊長が立っている。

「よくぞ参られた勇者殿。私がこの国の王であるアルダード・フォン・デルフィナだ。」

 国王は名乗ると手を差し出してきた。握手を求めているのだろう。

 男の手を握る趣味はないが、礼儀を欠くと面倒事になりそうだ。

 しかたなく俺も手を出して握り返す。


「初めまして。朝倉真一といいます。」

「うむ、よろしく頼む。さて、貴殿がなぜこの世界に呼ばれたのか説明せねばなるまいな。」

 そう言うと国王は語り始めた。



 この世界は俺が元いた世界とは違う異世界であること。

 この世界には魔物と呼ばれる邪悪な存在がおり、人類はその脅威にさらされていること。

 この国では代々勇者召喚の儀を行い、異世界から勇者を呼び出していること。

 召喚された勇者はこの世界の人間と比べて高い魔力量を保有していること。

 要約するとこんな感じだ。なんとも身勝手な話だ。


 ちなみに儀式を行った理由は100年の一度の周期で訪れる魔物の大量発生に備えるためという。間もなく発生周期が近づくらしい。本当に迷惑な。


 なるほど。だいたい理解できたと思う。

 ただ、一つ気になることがある。

「それで、私は何をすればいいのですか?」

 何をさせられるかで対応の仕方も変わってくる。


「おお、そうだったな。実はまだ何も決まっておらぬのだ。申し訳ないのだが、しばらくはここで待機してもらうことになるだろう。」


 呼び出しておいて何も決まってないとは。

「わかりました。では、まずはこの世界の一般常識について知りたいのですが。」

「よかろう。それらについては秘書官に説明させよう。」

「ありがとうございます。」


 秘書官の話によると、まずこの大陸には五つの国があり、それぞれ異なる文化を持っているそうだ。

 ここはそのうちの一つ、デルフィナ王国という国らしい。

 この国は比較的温暖な気候で過ごしやすいそうだ。

 他にも獣人族などいくつかの種族が存在するらしいが、詳しくは後で説明すると言われた。

 また、魔物が度々出没することもあるが今のところは目立った被害はないという。


 次に魔法について教わった。この世界では訓練を積めば誰でも魔法を使えるらしい。ただし、魔力量は個人差がある。訓練すれば増やすことも可能だということだ。

属性は火、水、風、土、光、闇の六つあり、一人につき一属性が基本となるようだ。複数の属性を持つ者もいるようだが、非常に珍しいとのこと。


 最後に、この世界には【ルール】が存在すると教えらえた。

 【ルール】はかつて神が作った不文律であり、世界がそれを拒むためこれを破ることはできないという。そして【ルール】は人や亜人にしか適用されない。

 その全容はまだ解明されていないという。

 よくわからんな。


「例えば、人を殺傷することや、略奪を働くことは【ルール】によって禁止されていることがわかっています。仮に人を傷つけようとして刃物を振り回そうとした場合、その者の動作が止まります。」

 つまり、犯罪行為を行おうとすると体が硬直するということか。

 どういう原理かわからんが、魔法があるなら何でもありか。

 聞けば禁止される犯罪行為は日本とほぼ同じなようだ。

 国王の警備がえらく手薄なのはそういう理由からか。


 一通りの説明が終わったところで休憩となった。

 部屋を出る前にずっと気になったことを聞いてみることにする。

「そういえば、私はいつ元の世界に戻れるのでしょうか。もしご存知であれば教えていただきたいのですが。」

 すると、国王は少し困ったような顔をした後、こう答えた。

「……残念ながら。そなたを元の世界に返す方法はない。」

「そうですか。」

 予想はしていたが、はっきりと言われると滅入るな。あまり現実感もわかない。



 そんなことを考えているうちに、いつの間にかあてがわれた部屋に着いたようだ。

 中に入ると侍女が出迎えてくれた。彼女は俺の世話をしてくれるらしい。

 名前はセーラというそうだ。

 黒髪で、年齢はかなり若くみえる。瞳が大きく愛嬌のある顔立ちだ。

 服装はメイド服に近いものを着ている。

 小柄だがゆったりした服の上からでもスタイルの良さがわかる。

 それでも胸部のふくらみは中々見応えがある。悪くない。


 早速世話を焼いてもらうことにした。

 まずは風呂に入りたいと言ったら準備してくれたので、遠慮なく入らせてもらうことにしよう。

 だが、ここで問題が発生した。

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現役官僚なので異世界のルールなど生ぬるい。抜け道なんていくらでもある。 @D-Shigemitsu

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