現役官僚なので異世界のルールなど生ぬるい。抜け道なんていくらでもある。

@D-Shigemitsu

第1話 朝倉召喚される

Ⅰ プロローグ


 世界には【ルール】が存在し絶対遵守される。


【ルール】はかつて神が作った不文律である。

【ルール】全てが解明されているわけではない。

【ルール】は人にしか適用されない。




Ⅱ 召喚


 あたり一面まばゆい光に包まれる。

 景色が歪み、輪郭を失っていく。

 何が起こっているかわからない。ただ、俺は何かが起こったことだけは理解した。

 光が収まる。


 そこは森の中だった。

 さっきまでいた俺の部屋はない。

 空気が違う。匂いも、雰囲気も、気温も、何もかも違う。

 ここは明らかに俺の部屋じゃない。そもそも俺の部屋に森なんてない。


 動揺しているようだ。落ち着こう。

 俺は朝倉真一(35歳)、大学卒業後に法務省に入省。現役の官僚。

 ふむ、自分が誰かはわかるな。


 視線を前に向ける。目の前には鎧を着た男が立っていた。

「ようこそおいでくださいました、勇者様!」

「……はい?」

 俺の口から間抜けな声が漏れた。状況が理解できない。

 念のため頬をつねる。

「……」

 どうやら寝ぼけてはいないようだ。


 改めて目の前の鎧の男を見る。年齢は四十代くらいだろうか。いかにも兵士のような顔つきだ。どう見ても日本人ではない。

「勇者様?」

 鎧の男は俺を見ながら怪訝そうに尋ねる。

 どうやら俺に話しかけているらしい。

 勇者とは……?とりあえず返事をすることにする。

「すみません。ちょっと驚いてしまって。」

「無理もないでしょう。突然のことで混乱されていると思います。ですが安心してください!我々があなたをお守りします!」

 よくわからないけど守ってくれるらしい。それはありがたい。

 いや、そんなことはどうでもいい。

 まずは現状確認をしよう。


 鎧の男に話しかける。

「ここはどこですか?」

「ここですか?ここは『イスターの森』です。」

 知らない場所だ。もはや地名なのかもわからない。

 質問を変えよう。

「あなたはどなたでしょうか?」

「これは失礼しました。私はこの森の警備隊長のルッソと申します。以後お見知りおきを。」

 警備隊長ということは軍隊か警察機構があるということか。

「そうですか。ところで、どうして私はここにいるのでしょうか?」

 平常時なら頭のおかしな質問だろう。だが今はこの聞き方しかない。


 鎧の男が少し考えて答える。

「それについては陛下にお聞きになった方がよろしいでしょう。」

 陛下?王様ということか。

「我々と陛下の所までご同行ください。」

 そう言って鎧の男は俺を馬車まで案内する。


 馬車に乗り込む。中はかなり広くて快適そうだ。

 椅子に座るとゆっくりと動き出す。乗り心地は悪くない。

 窓の外を見ると木々が広がっているのが見えた。

 植生からしてやはり日本ではなさそうだ。

 日本語で会話できているのが不思議だが、今は考えないでおこう。


 しばらく進むと大きな建物が見えてきた。ここは城なのだろうか。

 門をくぐり中に入る。そこには大勢の兵士がいた。皆屈強な体つきをしている。さすが兵士といった感じだな。

 そのまま奥に進んでいき、一際大きい建物の前まで来た。

 ここが目的地のようだ。

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