二十七枚目『煌めく』
「うへぇ〜……これでほんとに生きてんのぉ?」
ラウールが
「生きてますよぉ〜。私、寸止めが得意ですので♡」
「う〜ん、ミチカもそれ言ってたけど、理由になってないんだよなぁ〜……それ」
「まぁ、理由らしい理由を付けるなら、私の能力は生命力を扱いますから、副次的に人の生命力の分量をなんとなく理解出来るのはありますわね」
「ふーん……
「兄様と全く同じ
「げぇッ!? ちょ、もぉ〜! もっと早く言ってよそれ! 余裕で持ち手にしてたって!!」
「……楽しそうな所悪いんだけど、運び終わったらさっさとミチカのこと手伝ってくんない?」
船内にあった工具と、ノブナガが保険に渡してくれた蝋を使って、穴だらけの船内を直しながら、ミチカははしゃぐ二人に向かって、ムッとした声で割って入る。
「アハハッ、ごめんごめん。にしても、ミチカにこんな特技があったなんてビックリ! あんなボロボロだったのに、直しちゃうなんて」
「ん、別に隠してたわけじゃないけどね」
「ミチカはウチのエンジニアですもの。元はポンコツだった飛空挺を店として運用出来るまで整備したのも、ミチカですのよ」
「へぇ〜! 凄いね! ミチカ!!」
「──んまぁ〜……それ程でもぉ〜……あるかぁ〜」
褒められたのが余程嬉しかったのか、表情こそいつも通りの無愛想ではあるが、ムスッとしていた機嫌が、むふーっという満足気な鼻息が出るほどにご機嫌なものとなる。
「
そう言って、チアカが背伸びしてミチカの頬を両手で包み、
「失礼、二人で百合営業してる所申し訳ないのですが」
「最悪な切り口だけど、どしたの?」
「どうやら迎えが来たようですよ」
キミエにそう言われ、風穴から外を覗いてみると、そこには海亀を模した造りをした飛空挺──『ソラガメ』がこちらに向かって飛行して来ているのが見えた。
「ノブだぁ〜!! 座標届いてたんだ!!」
「はぁ〜……コレでやっと帰れる……ミチカ、シャワー浴びたい」
「あら? なら、私と一緒に入る? チアカさんもどうです?」
「う〜ん? シャワーは私も浴びたいけど、キミエと入るのはぁ〜……ん? ちょっと待って、アレ──」
「……? どうしたんですの? チアカさん」
何かを言いかけたチアカが、『ソラガメ』を指差して固まっているのを見て、不思議に思ったキミエと、同じくそれを見ていたミチカも、そちらに目を向け、チアカが言わんとしていた事に気付く。
「なんか……光ってね? あの亀」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ギッ……ガァッ! ンだよクソッ! 痛でぇ! 熱ッ……がぁぁああああッ!!」
僕の不運に巻き込まれたのか、
「
それでも、人蟲化する前から出来ていたのだから、能力ではなく、肉体に備わった機能であると推し量るべきだったことを考えると、これは言い訳の余地がない、恥だった。
オマケに一撃目をなんとか避けることこそ出来たが、発生した熱によって拘束に使っていた蝋を溶かされ、当たり所が悪かったのか、
生け捕りは不可能──ならば、ここで秒殺──駆除する他ない。
「キュアアァァァァッ!!」
「来るッ──!!」
直後、放たれた
「けど……クソッ……!! この損害は高くつきますよ……!!」
「キャアァァァアアアアッ!!」
すると、
「──ンなクソッ!!」
目と鼻の先まで迫り来る死に対し、僕は
「熱ッ……!? くっ……」
極限まで熱したら
「まぁ、右手が使えた所で……という所ではありますが──」
もう保険に仕込んでいた種も残ってない。膂力の差を技術で埋め合わせて何とかなっていた格闘戦も、左肩を負傷した今ではそれも難しい。
……もはや、これまでか。
「これだけは死んでも使いたくなかったんですがね……」
背に腹はかえられない。
これが僕一人の命だけが関わるなら、後ろのラウールさん辺りを生贄に逃走と洒落こんでいただろうが、今回はチアカさん達を迎えに行くという使命が僕にはある。
故に、ここで全てを諦め、蛾の
「キュッ……!! ァアッ……アァァァッ……!?」
そのまま飛んで逃げてくれれば一番楽なのだが、たかが下等な人間如きとか、生まれたてのひよっこの癖に思っているのか、半歩後退るだけで、それ以上退きはしなかった。
ならば僕も、出し惜しみはしない。
「『
覚悟を決め、『
「──……あ?」
「……──ァァァアアァァアアアアアアァァッ!?!?」
点は、徐々に徐々に、悲鳴のボリュームに比例して拡大され、より鮮明に姿が捉えられるようになった頃には、覗くのに使っていた窓を突き破り、見覚えのある顔が、店の中へと突入してくる。
「なんッ……だと……!?」
髪は
全身を宝石で創られたと言われても過言では無い容姿を堂々と
「チアカ・マーティネー! 参・上ッ!!」
声高らかに名乗って
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